研究実績の概要 |
本研究では、温度等の反応環境の変化による触媒活性の変化とその機構に対して、理論計算からのアプローチによりその解明に取り組んだ。研究成果として、以下の2点を挙げる。 ①排ガス浄化触媒における反応生成物の温度依存性:RhによるNO+CO反応 自動車排気ガスの浄化等を対象とした環境触媒の反応機構解明を目的とし、密度汎関数計算と化学反応論を用いたアプローチに取り組んだ。具体的な対象としては金属ロジウム(Rh)による一酸化炭素(CO)による一酸化窒素(NO)の無害なN2への変換反応を対象とした。手法としては、密度汎関数法により算出された活性化エネルギーおよび反応エネルギーを用いて反応速度論解析を実施した。その結果、低温では一酸化二窒素(N2O)分子が生成されるが高温ではこれと異なりN2分子が多く生成されるという実験と一致した結果が得られた。 ②Ru, Rh, Osによるアンモニア(NH3)合成反応に対する理論計算からの触媒活性予測 本研究では、Ru, Os, Rh触媒によるNH3生成反応を研究対象として第一原理計算と反応速度論を用いることによりNH3合成の活性予測を行なった。算出された活性化エネルギーは、Ru, Os, Rhに対して0.39, 0.41, 1.20 eVであり、これらの結果を用いて反応速度論解析を実行したところ、RuがもっともNH3生成反応速度が高く、次いでOs, そしてRhの生成反応速度は著しく小さかった。これは、上記の活性化エネルギーに加えて途中で生成されるNH2分子の吸着エネルギーも重要な要因であり、OsではNH2が活性サイトの占有率が高いために反応速度がRuに比べて遅くなる。したがって、活性化エネルギー同様に反応中間体の吸着、いわゆる被毒作用も触媒活性を左右する上で重要な因子であることが、第一原理計算と速度論解析により明らかとなった。
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