研究課題/領域番号 |
16K17863
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
石黒 志 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 特別研究員 (20752455)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 結像顕微XAFS / 化学状態イメージング / 樹状型酸化鉄 / in situ構造解析 |
研究実績の概要 |
固体触媒に存在する形状・構造の不均一性が触媒作用に及ぼす要因を明らかにするためには、反応in situ条件下での触媒粒子の化学状態をミクロ・ナノスケールで可視化することが求められている。本研究では、50 nmの空間分解能を有するin situ結像顕微CT-XAFS法により、触媒反応条件下でのFe酸化物系固体触媒粒子の3次元ナノ化学状態分布の可視化を行い、固体触媒の不均一性の中に潜む構造因子が触媒作用へ与える影響・効果を明らかにし、高活性・高機能な触媒開発の指針を与えることを目指す。 平成28年度は、兵庫県佐用郡佐用町のSPring-8内、理研ビームラインBL32B2内に50 nm空間分解能を有するin situ結像顕微CT-XAFS計測システムを立ち上げ、数umサイズの粒径の樹状型FeOx粒子1粒におけるFe K端2次元結像顕微XAFS計測から粒子内の2次元化学状態の可視化を行った。 水熱合成により調製したAs-prepared樹状型FeOx (A)に、623 Kでの水素還元処理(B)、続いて523 K以下での酸化処理(C)を行い、酸素吸蔵・放出サイクルにおける(A)-(B)の3種類の条件の樹状型FeOxを用意し、これらの分試料をSiN薄膜基板上に分散担持した。これら(A)-(B)の各試料基板の結像顕微イメージング計測をエネルギー毎に連続的に行い、得られた画像を連結することにより、ピクセル毎の2次元空間分解顕微Fe K端XANESスペクトルを得ることに成功した。得られたXANESスペクトルからα-Fe2O3/γ-Fe2O3/Fe3O4の相比率の空間分布を検討すると、(A)ではFeOxでは粒子全域でα-Fe2O3相であったが、(B)では大部分がFe3O4相、(C)では大部分がγ-Fe2O3相に転換される様子が明らかとなり、樹状型FeOx粒子1粒単位で結晶相(Fe化学状態分布)の変化を可視化できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度中に結像顕微CT-XAFS計測システムの立ち上げがほぼ完了し、異なる結晶相を持つ樹状型FeOx粒子1粒のFe K端2次元空間分解顕微XAFSスペクトルからFe化学状態の可視化が可能であることを実証した。反応in situ計測システムの準備も完了しているので、平成29年度にはいってすぐに、in situ結像顕微XAFS計測から酸素吸蔵・放出の繰り返しによる化学状態、触媒劣化の一連の過程の可視化を同一樹状型FeOx粒子で実施できる状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、in situ結像顕微XAFS計測から酸素吸蔵・放出の繰り返しによる化学状態、触媒劣化の一連の過程の可視化を同一樹状型FeOx粒子で実施し、樹状型FeOx粒子の反応及び劣化が発現するミクロ構造及びその化学状態変化が粒子内で、どのように伝播するかを明らかにしていくことを目指す。また並行して、コンピューター・トモグラフィー(CT)を組み込んだ計測(結像顕微CT-XAFS計測)により、樹状型FeOx粒子の3次元化学状態分布の可視化を目指す。こちらは長時間の計測が求められるので、3次元可視化が必須な試料を検討したのち、実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初作製・購入を予定していたin situ XAFSセルが設計の見直しにより、代替のより安価なヒータを用いても目的の性能を達成できることがわかったため、セル購入費として計上した金額分残金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度はin situ分解結像顕微XAFS計測による樹状型FeOx粒子の化学状態分布変化の可視化の実験を本格化させるため、計測に必要な試料基板が多数必要だと見込まれる。そのための試料調製に必要な、高純度試薬、高純度ガスボンベ、試料基板用のSiNメンブレン等を購入する。その他、放射光施設使用料、及び国際、国内学会における成果発表のための旅費のために計上する。
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