研究課題/領域番号 |
16K17864
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研究機関 | 特定非営利活動法人量子化学研究協会 |
研究代表者 |
黒川 悠索 特定非営利活動法人量子化学研究協会, 研究所, 研究員 (30590731)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シュレーディンガー方程式 / シュレーディンガー解 / Free Complement法 / 積分法 / サンプリング法 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、シュレーディンガー方程式の正確な解を求める方法であるFree Complement(FC)法を用いて、原子・分子のシュレーディンガー解をこれまで以上に高精度に求める方法を開拓することである。FC法には、サンプリング法と積分法の2種類が提案されている。本年度はまず、サンプリング法を用いて3電子Harmonium原子のシュレーディンガー解を求めた。3電子HarmoniumはCioslowskyらにより特殊な関数形を用いた積分法による研究がなされているが、我々の方法を用いると同等以上の精度(原子単位で小数点以下5桁以上の精度)で容易にシュレーディンガー解を得ることができた。この時、2つあるスピン関数の両方を用いることが重要であること、軌道指数の影響はほとんどないことなどが明らかとなった。また、中辻らによって提案された新しいサンプリング法であるLM1法を用いて、O原子、OHラジカルなどのシュレーディンガー解を1kcal/mol以上の精度で求めることができた。この方法は現在もさらなる改良を目指しているところである。 次に、FC法により生成される完員関数のうち、積分可能な完員関数(rij項などを含まない)のみを用いて積分計算する方法の開発を行った。この時、原子上にlocalizeした非直交基底を用いているため、従来の方法では、電子数Nに対し、最大でNの6乗の計算コストがかかる計算過程があった。本研究ではこれを(N+3)の4乗にまで高速化することができた。また、FC-積分法を用いて、水素分子の基底・励起状態のポテンシャルカーブとそれぞれの電子状態における振動レベルを求めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、本年度は主に積分法の開発を行う予定であったが、研究実績の概要に述べた通り、サンプリング法、積分法共に進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
サンプリング法と積分法の両方をさらに改良していく。具体的には、積分法で得られた波動関数を初期関数にしてサンプリング法を行うなど、高精度に安定的にシュレーディンガー解を求める方法を開拓する。
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