新しい湾曲した構造を持つ多環式芳香族炭化水素の構築を目的として、アントラセン誘導体に対して種々の反応を検討した。ジ-1-アントリルケトンに対し酸化的縮環反応(Scholl反応)を試みたところ、アントラセン9,9'-位で環化が進行し、7員環構造を内部に持つらせん型生成物が得られた。一方、メシチルオキシ基を導入したジ-1-アントリルケトンに対し同様の反応を行うと、カルボニル基の転移を伴った二重環化体が主生成物として得られることを明らかにした。またアントラセンに対する酸化的縮環反応を応用し、ルビセンの効率的合成法も確立した。
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