研究課題/領域番号 |
16K17868
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清川 謙介 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80632364)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 超原子価ヨウ素 / ヨウ素 / アミノ化 / ラジカル |
研究実績の概要 |
フタルイミダートを有する超原子価ヨウ素反応剤からの窒素ラジカル種の高効率発生法の開発を目指し、まずは還元剤として金属反応剤を作用させる手法を検討した。カルボニル部位を有する超原子価ヨウ素反応剤に対して、カルボニル部位に配位するような金属種を用いることで、錯体形成を介して効果的な一電子還元が期待できると考えた。すなわち、適切なルイス酸性を有し、かつ一電子還元能を有する遷移金属を選択した。特に、超原子価ヨウ素反応剤に対して一電子還元作用を示すことが知られている低原子価の銅や鉄、さらにマンガン系の化合物を中心に検討した。超原子価ヨウ素反応剤、および金属化合物の電気化学特性を考慮することで大まかな目処をつけ、実際の反応系に適用した。芳香族C-H結合アミノ化反応をモデル反応とした。超原子価ヨウ素反応剤から発生した窒素ラジカル種は芳香族化合物にラジカル付加し、生成したラジカル中間体は高原子価の金属錯体によって、一電子酸化を受けることでアミノ化生成物を与え、同時に金属触媒が再生するサイクルが成立すると考えた。まずは、市販されている種々の金属反応剤を検討したところ、目的とする生成物は少量生成するものの、収率の向上が見られなかった。そこで、金属種の酸化還元能力は金属上の配位子にも大きく影響されることから、種々の配位子の添加を検討した。一電子還元を促進すると考えられる電子供与性の配位子として、ビピリジル系の配位子などが有効であると考え検討したが、収率の大幅な向上は見られなかった。さらに、溶媒や温度などの細かな反応条件を徹底的に精査したが、収率は向上しなかった。一方、芳香族化合物に代えて、種々の求核種との反応を検討する中で、エノールシリルエーテルとの反応において、効率的にα-アミノカルボニル化合物が得られることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたフタルイミダートを有する超原子価ヨウ素反応剤からの窒素ラジカル種の高効率発生法の確立には未だ至っていないが、ターゲットとする反応において、目的生成物が低収率ながら得られることを確認している。また、種々の求核剤との反応を検討する中で、新たな反応性を見出すことができた。このような結果を加味し、当初想定していたスケジュールに比べてやや遅れは見られるものの、本研究は課題の達成に向けて着実に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
まずは、前年度に検討していた、フタルイミダートを有する超原子価ヨウ素反応剤からの窒素ラジカル種を活用する芳香族C-H結合アミノ化反応を引き続き検討する。超原子価ヨウ素反応剤の再設計、合成を行う。例えば、フタルイミド部位に電子供与性、および求引性置換基を導入し、その反応性をチューニングする。また、カルボニル部位を変化させることで金属種との配位効率、および反応性を調整する事が可能であると考えている。さらに、種々の芳香族化合物との反応を検討する。単純なベンゼン誘導体に加えて、チオフェンやピリジン類などの複素芳香族化合物との反応を検討する。さらに、ピレン類やカルバゾール類との反応を行うことで、有機半導体材料の有用なビルディングブロック候補化合物の迅速合成を目指す。また、クマリン類との反応により、蛍光材料物質の直接的な合成を目指す。また、エノールシリルエーテルとの反応についても、基質の一般性を検証し、反応機構の詳細を解明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
残額が少額となったため、次年度の予算とあわせて使用することとした。
|
次年度使用額の使用計画 |
繰越額は少額なため、当初の使用計画に大きな変更は生じない。
|