研究課題/領域番号 |
16K17871
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
長谷川 真士 北里大学, 理学部, 講師 (20438120)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カリックスアレーン / チオフェン / 酸化還元 / チエノチオフェン |
研究実績の概要 |
これまでに我々が開発してきたPd触媒を用いたジブロモアレーン類の高効率環化反応をさらに推し進め、様々なイオウ架橋の新規環状化合物の合成に成功した。例えば、ジブロモチオフェンとヘキサブチルスタンニルスルフィドとの環化クロスカップリング反応では、イオウ架橋の環状オリゴチオフェン化合物が生成する。これらの化合物はイオウ架橋のチアカリックス[n]チオフェンと考えることができる。本合成手法にて、様々な置換基を持つn=4-6の複数の化合物を効率よく合成した。 合成した化合物はイオウでつながったオリゴチオフェンであり、酸化してカチオンラジカル種を与えやすい。サイクリックボルタンメトリーや吸収スペクトルの比較より、生成した酸化種は分子全体に電荷またはスピンが非局在化していることがわかった。既存のカリックスアレーン類は酸化還元されにくい傾向にあったが、今回新しく合成した化合物は酸化されやすく、アクセプター分子との包接錯体の作製や光物性が期待される。一部、速報誌にまとめる頃ができたが、最終年度である次年度でこれらをフルペーパーとしてまとめる予定である。 一方、環状シクラセン類似化合物の前駆体として、チエノチオフェンを母骨格にしたベルト状環状化合物の合成に新しく成功した。可溶化したチエノチオフェンを用いて合成を行い、シクロパラ[8]チエノチオフェンへ導いた。化合物は1H NMR及び13C-NMRで同定した。現在、X線結晶構造解析を行っている
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、新しい完全共役環状化合物(シクラセン類似化合物)の合成に向けて、これまでに開発してきた合成法の適用範囲を調べてきた。今回の反応は予想通り、いくつかの基質に対して適用可能であり、目的の化合物に向けてどのような基質設計を行えば良いかの指針を確立した。また、チエノチオフェンを用いて別ルートでの合成も模索し、実際に環状化合物を得るまでに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
大まかに分けて2つの研究を推進してゆく。第一にすでに合成したチアカリックスチオフェン類のホストゲスト化学を調査し、機能性の複合体の探索と知見の獲得を目指す。同時に種々のチアカリックスチオフェン類のポスト修飾を試み、最終目標であるヘテロシクラセン類の合成に挑戦する。第二に、新しく開拓したチエノチオフェンを用いた環状化合物へのアプローチを推し進る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、情報収集のために国際会議等に参加する予定であったが、旅費を他の研究費から調達することができたため、使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度では、合成した環状化合物を最終目的化合物へ化学変換するための必要な試薬、およびガラス器具の購入費として使用する。その他、論文投稿に際して英文校閲などの費用として使用する予定である。
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