研究実績の概要 |
本年度は、Cu(I)(RPh-dmp)(P2)錯体 (RPh-dmp = 4,7-bis(RPh)-2,9-dimethyl-1,10-phenanthroline, P = リン配位子)を光増感剤としたCO2還元光触媒反応を行った。RPh基として電子求引性の4-trifluoromethyl-phenyl (CF3-Ph)基、およびπ電子系を拡大したビフェニル (BPh)基を導入した結果、光触媒効率の大幅な向上が確認された。Fe錯体触媒および犠牲還元剤共存下、436 nmの光照射により、最大で0.14の量子収率でCOを生成し、そのターンオーバー数はほぼ300にまで達した。これは、これまで報告してきた無置換(RPh = Ph)のCu(I)錯体光増感剤の場合の約2倍の効率である。さらに、この光触媒反応の効率増大は、これらCu(I)錯体の436 nmにおける光吸収効率の増大を大きく超えたことから、dmp配位子への置換基導入によりCu(I)錯体光増感剤の電子授受特性をも向上させたことがわかった。このとき光触媒反応には、dmp配位子と2つのリン配位子(P)とを、2,9位のメチル基を伸長させたC4アルキル鎖で連結することで4座配位子としたことが効果的に働いた。 またCu(I)錯体光増感剤の、可視光吸収能のさらなる増大を達成した。RPhとして4-cyano-Ph基や、4-nitro-Ph基を導入した場合に、RPhを有さないdmpを配位子として有するCu(I)錯体に比べそのMLCT (metal-to-ligand charge transfer: Cu -> dmp)吸収極大波長は約20 nmのレッドシフトを示し、400 nmの可視光域に達した。さらに、RPh基の代わりにヘテロ環の導入も試みた結果、2-benzothienyl基の導入によりその吸収極大波長は410 nmに達した。
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