研究課題/領域番号 |
16K17879
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山内 幸正 九州大学, 理学研究院, 助教 (50631769)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 水素発生 / 水の可視光分解 / 分子触媒 / 低過電圧 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、金属中心PCET(プロトン共役電子移動)型、及び配位子中心PCET型水素生成触媒の反応制御とその水可視光分解システムへの応用を目指している。金属中心PCET型コバルトNHC錯体触媒については、従来の系に置換基を導入した新規コバルトNHC錯体触媒を合成し、その特異的な触媒機能を評価した。また、その安定性についても多角的に評価を行い、種々のコバルトNHC錯体が分子性触媒として水素生成反応を促進することを明らかにした。 一方、配位子中心PCET型ニッケル錯体触媒については、330-400 mVの過電圧で水素を生成する高活性触媒であることが見出された。次に、均一系または不均一系のどちらで水素生成反応が進行するかについて綿密に検討を行ったところ、グラッシーカーボン電極を用いた際には電気化学応答によらないニッケル錯体種の吸着が確認されたが、吸着種の触媒効果は小さいと判断された。一方、ITO電極を用いた際には、吸着種の影響は一切観測されない一方で、ニッケル錯体触媒による水素生成に伴う触媒電流が観測された。また、ニッケル錯体触媒の水素生成反応機構を明らかにすることにも成功した。具体的には、配位子中心の多段階のPCET過程が進行することを電気化学測定、及びDFT計算により明らかにした。多段階のPCET過程により生成するニッケル錯体触媒の多電子還元種は、その互変異性化によりニッケルヒドリド中間種を形成可能であることを見出した。現在、このような中間種の形成を経て水素生成反応に導かれると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に従い、新規コバルトNHC錯体の合成と機能評価に成功した。また、ニッケル錯体触媒の反応機構解明にも成功した。そういった状況を踏まえ、現在おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、水素生成分子性触媒のさらなる高活性化を試みるとともに、それらの水可視光完全分解分子システムへの応用研究を展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度合成予定であった、ニッケルジチオラト誘導体及びコバルトNHC誘導体が計画通りに合成できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した研究経費を、ニッケルジチオラト誘導体及びコバルトNHC誘導体合成に必要な試薬、及びガラス器具の購入経費として使用する。
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