平成29年度(最終年度)では、イミダゾリウムと金属錯体触媒の配位子との局所的な相互作用を定量化することを目指した。このため、配位子に複数のイミダゾリウムを系列立てて導入する合成法をまず検討し、イミダゾリウムを1個づつ順に数珠繋ぎ状に導入する方法を開発できた。このような配位子を持つ新規金属錯体触媒の単離にも成功し、それらの電気化学的CO2還元反応特性も調べることができた。その結果、イミダゾリウムの個数が多くなるほど、還元反応における過電圧は減少する一方で、反応速度はそれほど低下しないことが明らかになった。
また、イミダゾリウムだけではなく、水酸基やアルキルアンモニオ基の効果についても、それらとの違いを明らかにすることを目的として検討を行った。例えば、水酸基は、錯体触媒の研究においてCO2還元のようなプロトン移動が関与する反応の活性化エネルギーを減少させる効果があるとして近年注目されており、反応の活性化エネルギーを減少させるという点では、イミダゾリウムと類似している。そこで、錯体触媒の配位子上にこれらの置換基を複数同時に導入した新規配位子を合成し、それらの錯体を単離した。これらについても電気化学的CO2還元反応特性を調べた結果、置換基は複数ある方が触媒の効率が高いことがわかった。更に重要なことに、異なる種類の置換基の組み合わせでも効率が高くなるという協同効果が見られた。今後、更なる速度向上のため、この効果の可能性を探る必要があることがわかった。
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