研究課題/領域番号 |
16K17884
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山本 浩二 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (70647198)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | σ-π連続性 / インドール / パラジウム |
研究実績の概要 |
ヘテロアレーン-遷移金属錯体はヘテロアレーン類の炭素-水素結合の直接的官能基化における中間体として考えられ、錯体化学や有機金属化学、触媒化学において重要な錯体である。しかしながら、ヘテロアレーンと遷移金属種との配位結合は弱く、その錯体構造はほとんど明らかにされていない。本研究ではヘテロアレーンの配位挙動とその反応性について明らかにすることを目的とする。本研究によってヘテロアレーンの配位挙動とその反応性を系統的に明らかに出来れば、金属触媒を用いたヘテロアレーン類の素反応研究や分子変換反応の機構解明に対して重要な知見が得られると期待される。 平成28年度は、インドールのパラジウム(II)中心に対する配位挙動について検討を行った。インドールのパラジウム触媒による炭素-水素結合直接官能基化は重要かつ有用な触媒反応であり、反応条件によって2位、3位の位置選択的官能基化を可能としている。しかしながら、これらの触媒反応の機構研究において、インドール-パラジウム錯体の配位形式はη1-σ錯体とη2-π錯体が実験的な証拠なしに提唱されており、配位形式と反応性の関係も理解されていないのが現状であった。本研究では置換活性なアセトニトリル配位子を有する種々のパラジウム(II)錯体に対してインドール配位子の導入を行い、インドール―パラジウム配位結合の結合様式を実験(NMR測定およびX線結晶構造解析)・理論(計算化学)両面から系統的に調べた。その結果、遷移金属錯体の中心金属の電子状態を変化させることによって、インドールのパラジウム中心に対する配位形式が連続的にσ-配位からπ-配位へと変化することを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はアレーン―金属錯体がσ-配位からπ-配位へと連続的に配位形式を変化させる性質を持つことに発想を得て、ヘテロアレーン-金属錯体においても金属中心の電子状態に応じてσーπ配位の連続的な変化を示すのではないかと考えたものである。これまでに、インドール―パラジウム配位結合におけるσーπ連続性を実証することに成功しており、これは当初の計画に沿ったものであることから、研究は順調に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
配位形式の相違によりヘテロアレーン類の反応活性が異なることが考えられ、触媒的ヘテロアレーン変換反応における反応性や位置選択性等の起源の解明について重点的に取り組む。また、ヘテロアレーン類の遷移金属中心に対する配位挙動を系統的に調べる。
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