ヘテロアレーン-遷移金属錯体はヘテロアレーン類の炭素-水素結合の直接的官能基化における中間体として考えられ、錯体化学や有機金属化学、触媒化学において重要な錯体である。しかしながら、ヘテロアレーンと遷移金属種との配位結合は弱く、その錯体構造はほとんど明らかにされていない。本研究はヘテロアレーン類の遷移金属種に対する配位挙動を系統的に明らかにし、σ/π配位挙動と反応性の関係を解明することを目的して取り組んだ。 平成29年度では、前年度に引き続き、ヘテロアレーン-遷移金属錯体の合成およびその構造解明に取り組んだ。その結果、インドールーパラジウム錯体のみならず、他のヘテロアレーン類のパラジウム金属中心に対する配位挙加を明らかにすることが出来た。また、計算化学的手法によってもヘテロアレーンパラジウムの理論的理解に取り組み、金属中心の電子状態と配位形式の相関について明らかにした。本研究によって得られたヘテロアレーンの配位挙動とその反応性に関する知見は金属触媒を用いたヘテロアレーン類の素反応研究や分子変換反応の機構解明に対して重要な指針を与えるものと考えている。
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