研究実績の概要 |
本研究では、共有結合でありながら可逆的な解離-結合が容易に実現出来る動的共有結合を用いて、ポルフィリンの組織化を行い、特定のナノカーボン構造に対して選択的な抽出・分散技術の開発を目指している。初年度は、動的共有結合を形成可能なポルフィリン誘導体を合成し、動的共有結合によるポルフィリンポリマーの構築を試みた。基本構造として、ポルフィリンの末端に動的共有結合部位に相当するアミノフェニル基を2か所、さらに溶解性向上のためにトリドデシロキシフェニル基を2か所有するポルフィリン誘導体の合成を行った。合成手順としては、まずジニトロポルフィリンを合成したのちに還元してジアミノポルフィリンを得ることとした。次に、このポルフィリン誘導体に対して、動的共有結合による組織化のモデル分子として、パラトルアルデヒドを用いた動的共有結合形成を試みたところ、収率51%で対応するジイミノポルフィリン誘導体を合成することに成功した。この構造については1H, 13C, 及び2D NMR測定、MALDI-TOF MS測定により帰属した。次に、スペーサー分子としてテレフタルアルデヒドを用いた動的共有結合形成を試みたところ、ポルフィリンオリゴマーの形成が確認された。オリゴマーについても1H, 13C, 及び2D NMR測定、MALDI-TOF MS測定により構造の帰属を行った。現在、このポルフィリンオリゴマーのさらなる構造解析及び合成条件によるオリゴマー化の効率、GPCによる分子量測定などを進めている。
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