研究課題/領域番号 |
16K17891
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
玉置 悠祐 東京工業大学, 理学院, 助教 (10752389)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光触媒 / 超分子錯体 / 二酸化炭素還元 |
研究実績の概要 |
まず二酸化炭素を還元するヘテロリング光触媒系を開発するため、その構成要素となる触媒や還元剤について検討した。リング状レニウム多核錯体は、可視光を吸収し電子移動を駆動する光増感機能を有することが分かっている。そこで、このリング状レニウム多核錯体から電子を受け取り、その電子を用いて二酸化炭素を還元できる触媒を探索した。その結果、二種類の異なるルテニウム錯体 [Ru(tpy)(NN)(CO)]2+, [Ru(NN)(CO)2Cl2] (tpy = 2,2’:6’,2”-terpyridine; NN = ジイミン配位子) が有望であることが分かった。これらの錯体は、光還元されたリング状レニウム多核錯体から電子を受け取ることができ、二酸化炭素を一酸化炭素あるいはギ酸へと高選択的に還元することを見出した。実際、構造的・電子的な異方性に着目したルテニウム錯体 [(mbip)Ru(tpy)]2+ (mbip = bis(N-methylbenzimidazolyl)pyridine) を光増感部として導入した新規超分子錯体は、上述の二種類のルテニウム錯体を触媒として用いると、二酸化炭素を効率よく還元する光触媒として働いた。[Ru(tpy)(NN)(CO)]2+ を触媒として用いた場合、その生成物分布はジイミン配位子の置換基によって調整できるルテニウム中心の電子密度に依存することが分かった。これらの得られた成果は、学術論文として二報掲載されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず二酸化炭素を還元するヘテロリング光触媒系を開発するため、その構成要素となる触媒や還元剤について検討した。リング状レニウム多核錯体は、可視光を吸収し電子移動を駆動する光増感機能を有することが分かっている。そこで、このリング状レニウム多核錯体から電子を受け取り、その電子を用いて二酸化炭素を還元できる触媒を探索した。その結果、二種類の異なるルテニウム錯体 [Ru(tpy)(NN)(CO)]2+, [Ru(NN)(CO)2Cl2] (tpy = 2,2’:6’,2”-terpyridine; NN = ジイミン配位子) が有望であることが分かった。これらの錯体は、光還元されたリング状レニウム多核錯体から電子を受け取ることができ、二酸化炭素を一酸化炭素あるいはギ酸へと高選択的に還元することを見出した。また、マンガン錯体 [Mn(k2-tpy)(CO)3Br], [Mn(NN)(CO)3Br] も同様に有望であることが分かった。実際、構造的・電子的な異方性に着目したルテニウムおよびオスミウム錯体 [(mbip)M(tpy)]2+ (mbip = bis(N-methylbenzimidazolyl)pyridine; M = Ru, Os) を光増感部として導入した新規超分子錯体は、上述の二種類のルテニウム錯体を触媒として用いた場合、二酸化炭素を効率よく還元する光触媒として働いた。[Ru(tpy)(NN)(CO)]2+ を触媒として用いると、その生成物分布はジイミン配位子の置換基によって調整できるルテニウム中心の電子密度に依存することが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究成果より、リング状レニウム多核錯体に導入することで二酸化炭素を還元する触媒として機能するルテニウムおよびマンガン錯体を見出している。そこで今後の研究計画としては、現在既に取り組んでいる最中であるが、これらの触媒をリング状レニウム多核錯体に導入した異種金属錯体から成るヘテロリング錯体の開発とその光触媒機能の検討を行う。また、レニウムユニット同士やレニウムユニットと触媒ユニットを連結する架橋配位子やリングの核数に依存したリングの空隙の大きさの光触媒特性に与える影響も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった装置(光源としてLEDを用いたメリーゴーラウンド型光照射装置)の開発が遅れ、発売予定がH29年度にずれ込んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
本来H28年度に購入予定であった装置(光源としてLEDを用いたメリーゴーラウンド型光照射装置)がH29年度には発売されるとメーカーから確約を得ており、これを購入する予定である。
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