研究実績の概要 |
二つの異なる三座配位子を有するヘテロレプティック型ルテニウム錯体 [(mbip)Ru(tpy)]2+ (mbip = bis(N-methylbenzimidazolyl)pyridine, tpy = 2,2’:6’,2”-terpyridine) は、光増感部として従来良く用いられている [Ru(N^N)3]2+型錯体 (N^N = ジイミン配位子) では達成できない優れた性質を示した。(1) 幅広い波長領域の可視光を利用:550-700 nmの領域に特異的な吸収帯が観測され、詳細な検討の結果、三重項励起状態への直接励起によるもの (S-T吸収) であると示唆された。これは、S-T吸収を示すRu(II)光増感錯体として初めての例であり、通常の方法では不可能な、励起寿命や還元力を維持したままの吸収波長領域の拡大に成功した。Re(I)やMn(I)のカルボニル錯体と共存させることで、赤色光で駆動するCO2還元光触媒反応においてCOあるいはギ酸を選択的に生成した。(2) 固体表面との複合体形成に適した光増感錯体:光増感錯体の固体材料表面への吸着を強化するため、アンカーとなるホスホン酸基の数を2から4へと増やせるように分子設計した。mbip配位子に4つのホスホン酸置換基を導入したRu(II)錯体を合成し、半導体表面への吸着挙動とその安定性について評価すると、従来の[Ru(N^N)3]2+型錯体と比べ、半導体表面からより外れにくくなっていることが分かった。
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