研究課題/領域番号 |
16K17892
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田浦 大輔 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (20622450)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超分子 / 二重らせん |
研究実績の概要 |
本研究では、二重らせん構造の特徴を最大限に活用し、そのキラルな『らせん空間』に、触媒部位を位置特異的に導入可能な二重らせん分子の合成手法を確立し、二重らせん空間を特異な不斉場に用いた、従来法では実現が困難な不斉反応の開発を目指す。また、『らせんがバネである』という概念に基づき、外部刺激を駆動力とした刺激応答性の不斉触媒の開発、すなわち、二重らせんの伸縮に由来する不斉反応・不斉識別の制御をも目指す。さらに、DNA類似の『相補性』を二重らせん構築に反映させ、相補鎖に異なる触媒部位を導入することにより、タンデム反応を可能にする不斉触媒の開発にも挑戦する。平成28年度は、連結部位にキラルCo(II)-サレン錯体を導入した光学活性なアミジンと光学不活性なカルボン酸を有する二量体を合成し、円二色性(CD)スペクトル測定より、それらが、塩橋形成を駆動力として、一方向巻きに片寄った相補的二重らせんを形成することを明らかにした。また、この相補的二重らせん分子が、二重らせん空間を不斉源とする協同効果により、触媒的不斉アルドール反応に対して、単鎖よりも高い不斉選択性を示すことを初めて実証した(89% ee)。さらに、連結部位にアキラルCo(II)-サレン錯体を導入した光学活性なアミジンと光学不活性なカルボン酸を有する二量体も別途合成し、得られた光学活性な相補的二重らせん分子を用いても不斉選択性は保持されることが分かった(50-45% ee)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の計画通り、連結部位にキラルおよびアキラルCo(II)-サレン錯体を導入した光学活性なアミジンと光学不活性なカルボン酸を有する二量体をそれぞれ合成し、それらが相補的二重らせんを形成することを明らかにした。さらに、得られた相補的二重らせん分子が、二重らせん空間を不斉源とする協同効果により、不斉反応に対して、不斉選択性を示すことを見出した。これは、二重らせん空間が不斉選択性の発現に極めて重要であることを示唆している。本研究成果は、学術論文(ACS Catalysis)に掲載されていることから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に得られた結果をもとに、今後は、二重らせんならではの『相補性』という特徴を最大限に利用して、一方の鎖にキラルあるいはアキラルMn(III)-サレン錯体を、もう一方の鎖にキラルあるいはアキラルCo(III)-サレン錯体を導入したアミジンおよびカルボン酸二量体からなる光学活性な相補的二重らせん分子を新たに合成する。得られる相補的二重らせん分子には、オレフィンの不斉エポキシ化と生成するエポキシドの開環重合を司る触媒が同一らせん分子内に共存しており、アキラルなオレフィンから光学活性なエポキシドを経て、ポリエポキシドがワンポットかつ高い不斉選択性で合成できる可能性があり、その実現を強力に推進する。また、二重らせんキラリティにより、アキラルなサレン錯体からも光学活性なエポキシドが合成可能かどうかについても併せて検討する。
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