研究課題/領域番号 |
16K17894
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
綱島 亮 山口大学, 創成科学研究科, 准教授 (70466431)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ポリオキソメタレート |
研究実績の概要 |
トップダウン的製法では困難な1-5 nmのサイズからなる粒子を用い、導電性ネットワーク構造を作製すると共に、電子輸送の分子論的理解・高伝導性・量子伝導性を目指してきた。ナノスケールでの電子輸送は、単一電子輸送を初め次世代エレクトロニクスに向けて重要な現象が多い。しかし、既存の超微細加工やコロイド系ナノ粒子では、同スケールの構造体を均一に作製しつつ規則的に並べることは容易ではない。この点で、金属酸化物を分子断片化したポリオキソメタレート(POM)を用いた解決に着眼した。 混合原子価にあるPMo(V)2Mo(VI)10O40アニオンについて、対カチオンとして鎖長の異なるテトラアルキルアンモニウムをもちいた試料について、構造と電気物性を評価した。鎖長の伸長とともにクラスター間距離が大きくなることを単結晶XRD測定から明らかにし、同時に、直流電気伝導度がクラスター間距離とともに指数関数的に減少することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
混合原子価にあるPMo(V)2Mo(VI)10O40アニオンについて、対カチオンとして鎖長の異なるテトラアルキルアンモニウムをもちいた試料について、単結晶化に成功することで、詳細な構造を明らかにできたとともに、異方的な電気物性評価を可能にした。鎖長の伸長とともにクラスター間距離を定量的に明らかにし、直流電気伝導度がクラスター間距離とともに指数関数的に減少することを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
POMと対カチオンについて、分子の特徴を表す因子(電子構造・活性、サイズ、形状、価数など)をきめ細かく変えつつ試料を調整し、単結晶X線構造解析などから構造を決定する。電子輸送特性の因子(伝導率、活性化エネルギー、ホッピングの減衰因子)とのプロットから相関を理解する。 (a)形状・サイズ: 様々な構造のPOMが知られ、カチオンを固定しながらPOMの構造と電子輸送特性の依存性を調べる。 (b)電子活性:POM骨格のMoをWに置換すると同形・同価数で電子アクセプター性が下がる。また、1電子還元の [PMoVMVI11O40]4-はPをSiへと置換した[SiMoVI12O40]4-と同形・同価数であるが後者は分子内に非局在化電子が無い。このような相違を利用し、結晶中での配列様式を保持したまま、POMの電子的性質を変えた調査が期待できる。また両者を比を変えながら混合し、非局在化電子数の異なるPOMを結晶中に同居させた“キャリアドーピング”を検討する。POM上でのオンサイトクーロン反発の理解や高伝導性が期待できる。POM上での電子反発は、単一電子輸送を目指す研究Bに重要な知見となる。また、混合比に対する影響は、パーコレーションモデルを用いた理解から着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入金額における端数が生じたため
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次年度使用額の使用計画 |
薬品代に充てる
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