研究実績の概要 |
本研究では、光応答性分子結晶であるジアリールエテン結晶のフォトクロミズムと結晶相転移に着目し、フォトクロミック反応挙動、発光特性、フォトメカニカル現象について研究を進めている。本年度は、昨年度の研究において見出した長鎖アルキル基を有するジアリールエテン結晶の単結晶-単結晶相転移および特異なフォトメカニカル現象について詳細に検討した。示差走査熱量(DSC)測定を行うと、相転移に由来する吸熱ピーク、発熱ピークが昇温過程および冷却過程でそれぞれ観測された。この棒状結晶に室温で紫外光を照射すると、結晶は紫外光照射のみで屈曲・戻りの往復運動を行い、可視光照射で再び屈曲・戻りの往復運動を行うという特異なメカニカル挙動が観測された。フォトクロミック反応と結晶相転移が組み合わさることで複雑な挙動となっている。さらに、紫外光を照射した結晶に対して温度を変化させると、温度変化に伴って結晶相転移が起こり、結晶が温度に応答して屈曲することを見出した。光と熱を組み合わせることで、より複雑な機能を持った結晶の作製に成功した(D. Kitagawa et al. Chem. Mater., 2017, 29, 7524)。また、ジアリールエテン結晶ナノワイヤーおよびマイクロリボンを作製し、それぞれのフォトメカニカル現象について詳細に検討を行った。特に、マイクロリボン結晶において、結晶の形状変化のモードが紫外光の照射方向に依存して変化することを見出した(D. Kitagawa et al., Nanoscale, 2018, 10, 3393; J. Am. Chem. Soc., 2018, 140, 4208.)。さらに、チオフェン環の2位がエテン部に結合したInverse型ジアリールエテンの置換基を修飾することで結晶化誘起増強発光を示すことを見出している。今後、詳細に検討する予定である。
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