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2018 年度 実施状況報告書

低~高分子までの生理活性化合物の精密合成を実現する水中反応の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K17902
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

渡辺 賢司  国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (90631937)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード生体共役反応 / 水中反応 / インドール / チオール / タンパク質 / ペプチド / インドリジン
研究実績の概要

2018年度で3年度目となる本研究課題では、タンパク質やペプチドなどの生体高分子の効率的な化学修飾技術の開発を目指した研究を進めている。前年度、インドール部位を含むアルコール化合物が、弱酸性緩衝水溶液中においてタンパク質やペプチドのシステイン残基(Cys)に含まれるチオール基と脱水酸基を伴いながら特異的に結合することを報告済みである(Chem. Eur. J. 2018, 24, 3959-3964)。本反応で用いるインドール部位を含むアルコール化合物はアミノ基、イミダゾール基、水酸基、カルボキシ基やリン酸アニオンとは反応せず、チオール基と選択的に反応することから、種々の機能性小分子を生体高分子のチオール基に導入するためのプラットフォームとして利用できることが分かった。本技術により、タンパク質やペプチドなどのチオール基に薬剤やビオチンリガンドなどの任意の機能性小分子を接続できるようになった。2018年度では、これまでに得た反応に関する基礎的な知見を踏まえて、より中性に近い穏和な条件においても迅速に反応が進行する、反応性に優れた基質の設計および合成を行った。また、タンパク質中のジスルフィド結合から還元によって得られるジチオールを、再架橋できる2つの反応点を持つ分子ツールの開発を行った。さらに、本手法を用いてタンパク質やペプチドに導入した機能性小分子を任意のタイミングで放出することを念頭に置き、結合切断を意図した研究への展開のための基礎的な実験および知見の収集を行った。具体的には光反応による結合切断およびpH選択的なチオール交換反応の検討を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

以前報告を行った、インドールを骨格に持つアルコール化合物は、pH 5.4の弱酸性水溶液中において、0.008 M-1 s-1程度の反応速度でチオール基と反応し、炭素ー硫黄結合を形成することが分かっている。本反応の反応速度の向上を意図し、基質のヘテロ芳香族部位の最適化を行った。基質の脱水酸基に伴って生成するカルボカチオン(イミニウムカチオン)中間体の安定性およびLUMOレベルを指標に、Gaussianを用いた計算化学の手法を用いて、適切な基質の探索を行った。種々の計算および実験の結果、メトキシインドリジンを骨格に持つ基質において5倍以上の反応速度の向上を行うことができた。さらに、本反応がpH6.4の、より中性に近い条件においても、円滑に進行することが分かった。種々のヘテロ環化合物を骨格に持つ基質の合成展開を行い、ジチオールと反応する基質の開発を行った。さらに、基質とチオールとの反応によって生成する炭素ー硫黄結合の安定性についても検討を行い、pH選択的にチオールの交換が起こることを見出した。また、メトキシインドリジンを含む基質の光反応性について研究を行い、基礎的な知見を得ることができている。

今後の研究の推進方策

2018年度の研究で得られた成果については一部、年度中の学会発表および論文発表に間に合わず、これらの成果の発表のために助成期間の延長手続を行った。延長の許可を得た2019年度では、研究をより精緻に達成するための追加、再現実験の実施を行うとともに学会発表および論文投稿を進める。また、2019年度に採択を受けた基盤研究Cでは、結合形成および切断が自在な生体共役反応の開発を行う。本若手研究Bで得た研究成果との橋渡しと連携を進める。

次年度使用額が生じた理由

2018年度の研究で得られた未発表の成果については、2019年度に学会発表および論文発表を行う予定である。これらの学会発表および論文発表のための追加実験に要する消耗品費および旅費のため、2019年度に116,763円の研究費を繰り越した。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ベンジリック位チオ化による生体共役反応の開発2018

    • 著者名/発表者名
      渡辺 賢司
    • 学会等名
      第13回六甲有機合成研究会

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公開日: 2019-12-27  

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