研究実績の概要 |
研究期間を通じて、タンパク質やペプチド、アミノ酸など高分子から低分子までの様々な分子量を持つ生体分子の化学修飾を行うために必要な水中反応や関連反応について研究を行ってきた。これまで、インドールを骨格に持つアルコール化合物が、弱酸性緩衝水溶液中において、タンパク質やペプチドのシステイン残基(Cys)に含まれるチオール基と脱水酸基を伴いながら官能基選択的に共有結合を形成することを報告した(Chem. Eur. J. 2018, 24(16), 3959-3964)。また、有機溶媒中において進行する、チオールおよびボロン酸の介在する関連反応についての研究を行った。 最終年度の2019年度においては、他グループより報告された、最新のチオールの関与する生体共役反応や共有結合形成反応についての文献調査を行い、自身がこれまでに取り組んできた反応開発との比較研究を行い、ミニレビューとして論文投稿を行った(有機合成化学協会誌, 2019, 77(8), 841-842)。これらの研究を通じて報告者は、生体分子の特定の官能基と速やかに安定な共有結合を形成する生体共役反応の重要性についての知見を深めるとともに、任意のタイミングで結合を解離し、化合物を放出する事の有用性についての理解を深めた。現在では、結合形成および切断を自在に行うことのできる生体分子の化学修飾ツールの開発とその応用に向けた研究を行っている。本若手研究Bで得た研究成果と知見を次課題への橋渡しと連携を進めた。
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