研究実績の概要 |
本研究ではTOA配位子を用いたNi錯体触媒により立体障害や酸化力の調節を実施し、立体選択的なアルカン酸化反応の開発を目指した。 【1】TOA配位子を有する新規Ni錯体触媒の合成: TOA配位子(置換基:ジメチル、ブチルおよびフェニル)を適用し、共配位子の異なる錯体[Ni(X)(TOA-Me2)](BPh4) (X=OAc, Cl, NO3, mCBA)や立体障害が異なる[Ni(Cl)(TOA-Bu)](BPh4)を合成して構造決定した。これら錯体の立体障害はまだ小さく、立体選択性向上にはより大きな基の導入が必要である。TOA-Ph錯体では、[Ni(X)(TOA-Ph)](Y)(X=OAc,Cl,NO3,mCBA; Y=BPh4,BF4)を合成したが構造決定には成功していない。さらに新展開としてFe,Co,CuのTOA-Me2錯体を構造決定できた。 【2】単純なアルカン基質の酸化活性:TOA-Me2,TOA-Ph,TOA-Bu,tpa,Tp,Toを有するNi錯体についてmCPBAを酸化剤としたシクロヘキサン、アダマンタンおよびメチルシクロヘキサンに対する活性および選択性の差異を評価した。最終年度においてはTOA-Buの評価を実施した。これら錯体のなかでTOA-Me2の錯体が最も反応が速かった。立体障害の大きい三級炭素の酸化はどの錯体でも進行しにくく、明確な差異も見られなかった。より大きな配位子または基質を適用する必要がある。当初の計画に加えて、[Ni(X)(TOA-Me2)](BPh4)の活性はXの種類が活性(反応誘導期の有無)に影響することを見出した。さらに他の金属種の錯体の反応性を探索し、鉄錯体が高活性であることを見出した。 【3】複雑なアルカン基質の酸化活性の評価:生成物の標品合成および定量条件の決定に手間取ったため、本年度より評価を始めたが補助事業廃止となった。
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