研究課題/領域番号 |
16K17906
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
山口 滋 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員 (70620821)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 触媒的不斉合成 / 一重項酸素 / 過酸化物 |
研究実績の概要 |
本研究では一重項酸素を用いた触媒的不斉過酸化物合成法の開発を行っている。キラルな過酸化物は抗マラリア薬などの有用な生物活性分子に見られる重要な化合物群である。キラル過酸化物の合成法としてはキラルな前駆体を用いた多段階を経る不斉合成が一般的である。過酸化物を用いて触媒的に基質にペルオキシ基をエナンチオ選択的に導入する手法の報告例もいくつか見られる。一方、本研究では、豊富に手に入る分子状酸素を用いてキラル過酸化物を触媒的かつエナンチオ選択的に合成する手法の開発に取り組んでいる。本研究を通してキラル過酸化物の効率的な合成手法が確立できれば、医薬品開発など過酸化物を基盤とした生物活性分子に関する研究を促進できると考えている。すでに分子状酸素を用いて、触媒的に基質を過酸化物に変換することには成功している。しかしエナンチオ選択性が低いことが問題であった。そこで本年度は高エナンチオ選択的に反応を進行させるための触媒の開発に取り組んだ。とくに触媒の開発効率化を目指し、計算化学的手法の活用を行っている。すでに開発済みの不斉触媒反応をモデル反応として用い、計算化学的手法を駆使して不斉配位子のどこに置換基を導入すればエナンチオ選択性が向上するかに関する詳細な情報が得られつつある。実際に、得られた知見をもとに不斉触媒を設計・合成し、モデル反応において検討を行ったところ、確かにエナンチオ選択性が向上することを明らかにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計算化学的手法を用いて過酸化物の触媒的不斉合成においてエナンチオ選択性を向上させる手がかりを得られたものの、エナンチオ選択性の向上にはいたっていない。現在、得られた知見をもとに新規触媒の合成に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
計算化学的手法により得られた知見をもとに新規触媒を合成し、反応を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた網羅的な不斉触媒のスクリーニングではなく、計算化学を活用した触媒構造の設計を行ったことにより、試薬等の購入量が予想より少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
計算化学を活用した触媒設計に関して成果が得られるつつある。設計した触媒の合成や開発のための試薬購入に予算をあてる。また得られた成果を国内外の学会で発表していく。
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