研究課題/領域番号 |
16K17909
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
前田 利菜 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (90771725)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ポリロタキサン / 力学物性 / シクロデキストリン / 小角X線散乱 / 広角X線散乱 |
研究実績の概要 |
本研究では、超分子を利用した新規高分子自己組織化材料の創成を目指している。具体的には、超分子構造の一種であるポリロタキサンを応用し、ブロック共重合体を軸分子として用いることで、刺激によって環状分子がブロック共重合体上で 自由に動く材料の新規合成、およびその応用を目指している。平成28年度は、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド(PEO-PPO-PEO)トリブロック共重合体と β-シクロデキストリン(βCD)からなるポリロタキサンの合成法を確立し。キャスト溶媒によって環状分子の位置が変化することを明らかにした。平成29年度は温度による環状分子の位置のスイッチング転移を試みた。温度によるスイッチング転移を起こすために環状分子であるβCDが融解しなければならない。そこで21個あるβCDの水酸基をヒドロキシプロピル基、あるいはトリメチルシリル基で化学修飾した 。以下それぞれの化合物をHPPR、TMSPRと呼称する。HPPR、TMSPRともに期待したように熱によるβCDの軸上の位置のスイッチング転移は見られなかったが、βCDの水酸基の修飾に用いた官能基の種類によってβCDの軸上の位置が制御できることが明らかになった。小角、および広角X線散乱測定結果よりHPPRではβCDがアモルファス状になり、 PPO上に集合することが明らかになった。一方TMSPRではβCDがヘキサゴナル配列したカラムナー構造を形成し、軸上ではそのクラスター分散していることがわかった。これらの構造の違いは力学物性に大きな変化をもたらし、HPPRは高温で流動するのに対してTMSPRは高温でゴム状平坦領域を示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、平成29年では度溶液中でのスイッチング転移の解明とバルク中での自己組織化構造形成の確認を行う予定であったが、βCDの修飾基による自己組織化構造、および力学物性の変化という全く予想していなかった結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度ではβCDの軸上の位置は温度によってスイッチングさせることが難しいことがわかった。そこで平成30年度では力場印加によるスイッチング転移を試みることにした。具体的にはβCDを架橋することによりマクロな力場が環状分子に伝わるように分子設計を行い、ポリロタキサンの架橋シートを延伸することにより環状分子の軸上の位置のスイッチング転移を試みる予定である。
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