研究課題/領域番号 |
16K17913
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
角田 貴洋 金沢大学, 物質化学系, 助教 (70746495)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | かご型シルセスキオキサン / 有機―無機ハイブリッドナノゲル / 微粒子センサー / 常磁性フッ素化ナノゲル / フッ素NMR / アミン化合物センサー |
研究実績の概要 |
本年度は、申請書に記載した研究課題のうち、以下の研究を実施した。 1.共役系分子の導入法の確立と機能性ハイブリッドナノゲルの創出と微粒子状物質のサイズ認識 …分子レベルで有機成分と無機成分がハイブリッドした構造を有しているPOSSを利用した、ハイブリッドナノゲルを合成した。本年度は、POSSを連結する色素としてビチオフェンを選択し、POSSとの縮合反応により合成した。得られたハイブリッドナノゲルは、水溶液中で青色発光を呈した。蛍光発光スペクトルを測定した結果、450 nm 付近にブロードなピークが観測された。またピーク波長は、ビチオフェンのみの場合より長波長側に移動していることが確認された。得られたハイブリッドナノゲルへシリカ微粒子を添加した。その結果、シリカ微粒子のサイズに応じ、ハイブリッドナノゲルの発光ピークトップは、変化した。その変化はビチオフェンユニットの導入量により制御可能である。これは、POSSの疎水性効果を利用した、ハイブリッドナノゲルの応用例の1つになると期待される。 2.フッ素NMR信号を示す常磁性フッ素化ナノゲルの合成と標的物質によるフッ素NMR信号の変化 …POSSの放射状に広がった置換基へフッ素置換基を導入し、常磁性のニッケルを配位させたポルフィリンを吸着させることで、合成を行った。その結果、POSSの高水中分散性からニッケルの磁性を損なわずフッ素NMR信号を示す常磁性フッ素化ナノゲルが得られた。これは、市販のアミン化合物を蛍光法と同程度の濃度で添加することで、フッ素NMRの信号が減少する挙動を示した。信号の減少時、凝集体が形成すること、NMRの緩和時間が変化しないことから、アミン化合物により形成した凝集体は常磁性効果の増強によりフッ素NMR信号を示さなくなり、残留した常時性フッ素化ナノゲルのフッ素NMR信号が観測されたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の課題(1)の研究に関して、共役系分子の導入法の確立と機能性ハイブリッドナノゲルの創出を目的とし、共役系分子をリンカーとしたナノゲルの合成を予定していた。実際にビチオフェンの二置換カルボン酸体と八置換アミノPOSSとのゲル化反応により、有機―無機ナノゲルの合成に成功した。共役系分子をリンカーとして利用したナノゲルの合成には、基盤技術の構築が必要であったが、前半期間において、多種分子への適用やそれらの導入量のコントロール法の開拓に成功した。更に、得られた発光性有機―無機ハイブリッドナノゲルを利用し、シリカ微粒子のサイズを光学測定により判別できる機能発現に成功した。その結果、本研究で目的とする機能の発現に成功し、化合物の合成から物性の評価まで効率的に進行したため、おおむね順調に進行している。 課題(2)の研究に関して、フッ素基を組み込んだハイブリッドゲルは次年度に合成する予定であったが、フッ素修飾POSSの合成とポルフィリンニッケル錯体の混合物によるフッ素NMRプローブの合成に成功した。更に、アミン化合物をターゲットとして蛍光濃度で判断できる機能発現に成功し、POSSが磁性へと影響を与えず、水中での高分散性の特性を十分に発現した機能が得られた。得られた実験結果より、当初目的としていた磁性へ与えるPOSSの影響が判断できかつ、磁性を利用したNMRプローブの開発に成功しており、学術誌へと投稿していることから、おおむね順調に進行している。そのほか、学会発表も行っており、全体としてはおおむね順調に進展したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
課題(1)に関して今後は、化合物ライブラリー形成のため、他のリンカーを利用した有機―無機ハイブリッドナノゲルの合成を行う。またそれらを解析することで、更なる有機-無機ハイブリッドナノゲルの構造と機能との相関を詳細に突き詰めていく。具体的には、電荷移動錯体を形成しやすいトリフェニルアミンの二置換カルボン酸体を合成し、それを共役系リンカーとした縮合反応により新たな機能性有機―無機ハイブリッドナノゲルの合成を行う。さらに、赤色発光を示すジチエノベンゾチアジアゾールの二置換カルボン酸体を利用してナノゲルの合成を試みる。これら作成したナノゲルは、架橋率をコントロールした水溶性の向上を図り、水中での疎水性物質(ピレンなど)の吸着挙動と内包量の評価を試みる。疎水性物質の吸着を行う際に、発光領域がオーバーラップしてしまう可能性が考えられる。その際には、発光領域の異なる色素の利用を視野に入れて行う。これらにより、一般性の拡張を検討してゆく。 課題(2)に関して今後は、導入する錯体種変更による更なる高感度化や選択性向上の検討を行う予定である。具体的には、鉄やコバルトが配位したポルフィリン錯体を利用する。また感度向上のために、フッ素基導入量の増加や常磁性金属を配意させたポルフィリンの添加量の増加を図る。更に、アミン化合物以外のターゲット物質を利用したフッ素NMRセンサーの開発を行う。標的認識後やフッ素基導入量の増加、ポルフィリンの添加量の増加により沈殿が生じる可能性が考えられる。その場合は、錯体種の変更や水溶性置換基の導入により解決を図る。
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