研究課題/領域番号 |
16K17915
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
押村 美幸 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 助教 (30596200)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ポリエステル / エステル交換反応 / 化学選択的反応 / アミノ酸 / ポリカーボネート / 重縮合反応 |
研究実績の概要 |
昨年度、ジアニオン型亜鉛アート錯体(TBZL)のエステル交換への高い化学選択性を利用し、TBZLを触媒に用いたSerおよびThrのメチルエステル体(L-Ser-OMeおよびL-Thr-OMe)の重縮合反応により、側鎖にアミノ基を有するポリエステルのone-step合成を試みた。エステル交換反応は進行するものの、反応中または反応後、精製処理の段階でエステル結合からアミド結合へのアシル転移反応が起きてしまった。このアシル転移反応は、分子内で安定な5員環を形成しアミノ基がカルボン酸に近づくことで速やかに進行すると考えられている。 そこで、Aspのカルボキシ基をエチル化したL-Asp-OEtをジカルボン酸エステルとして用い、脂肪族ジオールとの重縮合を試みた。この分子構造の場合には不安定な4員環の形成となるため、アシル転移が抑制されることを期待した。L-Asp-OEtと1,9-ノナンジオールをモノマーに、触媒として5 ~ 10 mol%のTBZLを用い、減圧条件下25 ~ 40 °Cで反応を行った。反応後精製を行いNMRで解析を行ったところ、エステル交換反応により重縮合反応が進行していること、アミド化が起こっておらず側鎖にアミノ基が存在していることがわかった。末端基定量法により、数平均分子量1000程度のポリエステルの生成を確認した。 また、環状二級アミンであるProのγ炭素原子にヒドロキシ基が結合した構造であり、天然にも存在するヒドロキシプロリンのメチルおよびベンジルエステル体(HO-Pro-OMeおよびHO-Pro-OBn)を用いたモノマーに用いた重縮合も試みた。その結果、末端基定量法により、数平均分子量2000程度のポリエステルの生成を確認した。 さらに、ジエステルの代わりにジフェニルカーボネートを用いた、ジオールとの交換反応によるポリカーボネートの合成に成功し、論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アミノ基が存在しない系と比べ、アミノ基が存在することで高重合体とはならなかったものの、アミノ基が反応することなく化学選択的にエステル交換反応が進行し、側鎖にアミノ基を有するポリエステルのone-pot合成の触媒としてTBZLが有用であることを確認できたため。また、ポリカーボネート合成の研究において予定以上の結果が出ており、論文発表、学会発表を行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
側鎖にアミノ基を有するポリエステルのone-pot合成の重合条件を最適化し、合成した種々のポリマーの生分解性の評価や物性評価を行う。DSCおよびTGAを用いて、合成した側鎖にアミノ基を有するポリエステルやポリカーボネートの、融点、ガラス転移温度、分解温度等の熱特性を調べる。ポリ乳酸やポリカプロラクトンなどの他の一般的な脂肪族ポリエステルとの比較を行い、主鎖・側鎖構造と物性との相関を調べる。また、側鎖のアミノ基に後修飾を行い、各種物性の変化を見る。 また、エステル交換反応を利用したポリエステル合成だけでなく、ジフェニルカーボネートとジオールとの交換反応によるポリカーボネートの合成にTBZLが有効であることがわかったので、アミノ基やアミド基などを有するポリカーボネートの重合に関しても検討を行い、医薬・組織工学用途への利用を目指す。 本研究のデータの蓄積により、生分解性ポリエステル、ポリカーボネートの新規製造法及び新規ポリマーについての特許出願、論文発表、学会発表等、成果発表を行う。
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