昨年度、ジアニオン型亜鉛アート錯体(TBZL)のエステル交換反応への高い化学選択性を利用し、TBZLを触媒に、アスパラギン酸のカルボキシ基をエチル化したL-Asp-OEtをジカルボン酸エステルとして用いた脂肪族ジオールとの重縮合反応により、側鎖にアミノ基を有するポリエステルのone-step合成を試みた。分子間エステル交換反応により重縮合反応が進行していること、アミド化が起こっておらず側鎖にアミノ基が存在していることがわかった。 今年度は、環状二級アミンであるL-プロリンのγ炭素原子にヒドロキシ基が結合した構造であり、天然にも存在するL-ヒドロキシプロリンのエステル体をモノマーに用いた重縮合を試みた。L-ヒドロキシプロリンのメチルおよびベンジルエステル体は単離が困難であり、高純度でモノマーを得ることができなかった。そこで、様々なエステル体の合成検討を行ったところ、イソプロピルエステル体(HO-Pro-OiPr)は結晶化度が高く、再結晶精製により高純度で得られることを見出した。TBZLを用いたHO-Pro-OiPrの重縮合を試み、分子間エステル交換反応によりオリゴマーの生成が確認された。 また、エステル交換反応を利用したポリエステル合成だけでなく、ジフェニルカーボネートとジオールとの交換反応によるポリカーボネートの合成や、ポリメタクリレートおよびポリビニルアルコールの側鎖変換にTBZLが有効であることを見出した。ポリフェニルメタクリレートやポリビニルメタクリレートと種々のアルコールとの反応により、定量的に側鎖変換が可能であるだけでなく、フルオロアルコールとの反応や末端選択的な反応も進行することがわかり、学会発表および論文投稿を行った。ポリビニルアルコールの側鎖変換においては、アミノ酸エステルを用いることで側鎖にアミノ基を有するポリビニルエステルが合成できることを見出した。
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