研究課題/領域番号 |
16K17919
|
研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
大坂 一生 北陸先端科学技術大学院大学, ナノマテリアルテクノロジーセンター, 講師 (90550244)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | SALDI / 質量分析イメージング / 金属薄膜 / レーザー脱離イオン化 |
研究実績の概要 |
本研究では、金属ナノ薄膜と脱離イオン化質量分析技術を組み合わせた新しいイオン化法 金属薄膜を利用した表面支援レーザー脱離イオン化(MF-SALDI)法を開発して、様々な生体内物質を一度に検出してそれらの局在を明らかにする。主にホルモンや生体内代謝物の脂質の解析を行う。 生体分子の一斉分析に最も有効なMF-SALDI法を構築してその最適条件とイオン化特性を解明し、MF-SALDI質量分析法を用いて脂質代謝と疾患の関連性の評価を行うことを目的として,研究を行った。 白金薄膜を用いたPt-SALDIの最適化条件を検討し,厚さ3 nmのPt薄膜を用いると最もイオン化効率が高いことがわかった.Pt-SALDIを用いて,様々な化合物を分析してPt-SALDIと従来法のMALDIを比較した結果,フェノール系酸化防止剤イオン強度はMALDIの100倍,ステロイド系ホルモンは10倍,オリゴ糖は3倍であることがわかった.また脂質のフォスファチジルコリンはDHBマトリックスを用いたMALDIにおいては検出できたが,Pt-SALDIでは検出できず,ジアシルグリセロールはMALDIで検出できなかったがPt-SALDIで高感度に検出することができた.上記の結果より,Pt-SALDIはMALDIとは全く異なるイオン化特性を持つため,有効な分析法であることが示された.Pt-SALDIを農薬の分析にも適用し,Pt- SALDI-MSIは葉の直接分析と局在解析が可能であり,農薬浸透性を評価できることを示した. 銀薄膜についても同様に検証し,白金や銀,さらに白金/銀の合金を用いて,ポリマー中の色素成分の分析を行った.Pt/Agは,Agが78%のときが最もイオン化効率が高かった.Pt/Ag-SALDIは,PtとAg-SALDIの両方のイオン化特性を併せ持つことがわかり,汎用性が高いことが示された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Pt-SALDIの最適条件を決定し,様々な種類の化合物の検出感度を評価して,Pt-SALDIの有効性を明らかにできた.Pt/Ag合金薄膜を用いたMF-SALDI-MSの最適条件についても検討して,実際にポリマー中の色素成分の分析に応用できた.Pt-SALDIとAg-SALDI,Pt/Ag-SALDIの比較評価から,Pt/Ag-SALDIはPt-SALDIとAg-SALDIの両方のイオン化特性を併せ持つことを明らかにした.Pt-SALDIに関しては,その応用としてラット脳切片上の脂質成分の質量分析イメージング,また,植物中の葉の質量分析イメージングから植物への農薬の浸透性の評価を行った.
|
今後の研究の推進方策 |
H29年度はH28年度に引き続き,合金のMF-SALDIの評価を行う.また,MF-SALDI-IMSを用いた定量分析法を開発してその評価を行う。定量分析では,標準試料として脂質(diacylglycerol、triacylglycerol、phosphatidylchorine、phosphatidylethanolamine、plasmalogen)やホルモン(テストステロン)、ペプチド(副腎皮質刺激ホルモン)を用いる。生体内に近い評価系を構築して定量性を評価するために、標準試料を添加した・添加していないラット脳や肝臓細胞切片を試料として用いる。H30は,ラットの各種細胞の試料を準備して、それぞれMF-SALDI-IMS分析を行う。主に脂質や生体内ホルモンを中心とした生体分子を解析する。バイオマーカーとなる単一の化合物を探索するとともに、複合的に相乗効果を示す複数の生体分子を探索して解析する。
|