研究実績の概要 |
本研究ではプラズモンの電場増強効果による増強光圧を利用した分子分離・精製法の確立を目指す。プラズモン光ピンセットにより形成した温度応答性高分子の分子集合体を利用することで、水溶液中に微量に溶解している有機分子を抽出・検出する手法を開発した。本成果により電気学会 平成28年電子・情報・システム部門 技術委員会奨励賞を受賞し、大きく注目を集めている。 分子分離を目指すべく我々は、プラズモンと分子の電子遷移を同時に励起することで、飛躍的な光圧の増幅を図る共鳴プラズモン光捕捉の実現を目指した。蛍光性J会合体およびH会合体が混在する水溶液をプラズモン構造体と接触させ、共鳴プラズモン光捕捉を試みたところ、J会合体が優先的に捕捉された (Opt. Exp., 25(2017), 13617.)。 このようにプラズモン光ピンセットは優れたマニピュレーション法になると期待できるが、超えるべき障壁も少なくないことがわかってきた。そこで、我々は新たな光マニピュレーション法の開発に挑み、ナノニードルを有するケイ素結晶板(ブラックシリコン)に着目した。このブラックシリコンを用いた新しい光マニピュレーション法【Nano-Structured SemiConductor-Assisted (NASSCA) 光ピンセット】を新たに開発した。現在までに、その特徴を明らかにしつつあり、光マニピュレーションによる分子結晶化法の実現が大きく期待できる。初期の研究成果を学術論文として公表した(Sci. Rep. 7(2017), 12298)。この論文はSci. Rep.誌に掲載された3000報以上の物理学分野の論文の中から、Top 100 Read Physics Papers 2017にも選ばれている。 以上の成果を、平成29年度は国際学会2件、国内学会5件(内、招待講演2件)、和文総説5報などでも発表した。
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