研究実績の概要 |
平成30年度は本課題の最終年度であり、本研究で開発した光還元反応に基づくPd分離法が、ウランを多量に含む放射性廃棄物へ適用可能であることを実証するため、本分離法をウラン含有放射性廃棄物模擬試料に適用した。 14元素混合溶液とウランが含まれる標準溶液を混合し、25元素を含んだウラン含有試料を調製した。このウラン含有試料とエタノールを混合した後、20分のレーザー照射を行ってPd沈殿を生成した。生成したPd沈殿を遠心分離により溶液から分離し、王水で溶解させた後、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いてPd沈殿に含まれる各元素の回収率を導出した。 Pd濃度2.4 ppmに対し、U濃度を等量から20倍量(2.4~48 ppm)まで変化させて、Pdの回収試験を行った。その結果、20分のレーザー照射という短く単純なステップで、約40%のPdを沈殿として溶液から分離回収することができた。また、Pd沈殿に含まれる他元素の混入率は1%以下と極めて低く、ウランを多量に含む試料から選択的にPdを回収することができた。さらに、高レベル放射性廃液中で主要な放射能源となるSr,Cs,Baは、99.9%以上除去された。Pdの質量分析を行う際に測定妨害となるZr, Mo,Ruも99%以上除去されたことに加え、微粒子溶解液の質量数107におけるシグナルはバックグラウンドと同程度であった。このことは、長寿命放射性核種であるPd-107の分析をICP-MSで行う際に、スペクトル干渉源となる元素を除去できたことを示す。 以上の結果から、本分離法を適用することで、ウランを多量に含む多元素混合溶液から選択的にPdを回収できることを実証した。今後、高レベル放射性廃液等に含まれ、分析値の報告例が非常に希少な、長寿命核種Pd-107の分析前処理法としての活用が期待できる。
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