研究課題/領域番号 |
16K17929
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柴田 友和 筑波大学, 数理物質系, 助教 (70739721)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 四重鎖DNA / G-カルテット / ヘム / ヘム核酸 / ペルオキシダーゼ活性 |
研究実績の概要 |
ヘムはヘムタンパク質の補欠分子族として含まれる分子であり,タンパク質部分の作り出す独特の環境にヘムが存在することにより,様々な機能を発現している.本研究ではこのタンパク質部分をDNAに置き換えることでヘムタンパク質のような機能を出現させること,およびその機能発現の分子的メカニズムや機能調節機構を明らかにすることを目指した. DNA塩基配列d(TTAGGG)は四分子がG-カルテットを形成することで平行型四重鎖DNAが生じる.更に,3'末端のG-カルテットにヘムが結合することが明らかになっていたが,私共の研究により結合距離及びヘムの配位構造を明らかにした.NMRによる四重鎖DNAにヘムが結合前後での,環電流効果の解析により,ヘムは3'末端のG-カルテットに約3.5 nmの距離で結合することが明らかにした.更にヘムに水が配位していることが示され,この配位構造が後述のペルオキシダーゼ活性の発現に重要な役割を担っていることが示唆された.また,この四重鎖DNAとヘムの複合体はペルオキシダーゼ活性を示し,その活性の強さはヘム単体の約5倍であることが明らかになった. また,ヘム周辺環境を変化させ,機能を制御することを目的として,ヘムの結合する3'末端に新たに塩基を追加した四重鎖DNAにおいても,ヘムとの相互作用についても解析した.予想通り,ヘムは追加した塩基と3'末端のG-カルテットの間に結合することを明らかにした.この解析結果により,ヘム四重鎖DNA複合体において,DNAの塩基を追加することによりヘム周辺環境を変えた成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NMRによる構造解析により構造を詳細に解析することによって,予想通り,ヘムは追加した塩基と3'末端のG-カルテットの間に結合することを明らかにすることができた.そして,DNAの塩基を追加する塩基の種類を変えることによりヘム周辺環境を変えることに成功した.更に,四重鎖DNAとヘムの複合体の機能制御に重要と考えられているヘムの軸配位子として水が配位していることが明らかになった.このように予想通りの結果出ことから,おおむね順調に進展してると言える.
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今後の研究の推進方策 |
ヘム四重鎖DNA複合体において,DNAの塩基を追加することによりヘム周辺環境を変えた成功したので,今後はヘム周辺環境の変化を様々な方法で解析すると共に,複合体の示すペルオキシダーゼ活性との関係についても明らかにしていく.ヘム周辺環境の評価方法としては,共鳴ラマン,酸塩基平衡定数の解析,分子動力学計算を用いる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画的に予算を使用に努めたが,当初の見積との実際の使用額との間に差異生じてしまったことと不測の事態が生じたときに対応できるようにしたため,既受領額累計の約5%である101,054円の次年度使用額が生じてしまった.
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次年度使用額の使用計画 |
これまでの実験計画では四分子からなる四重鎖DNAのみ取り扱うことにしていたが,より構造の安定な1分子で四重鎖DNAを組むDNAにおいても同様の研究を進めて行くために,次年度使用額を用います.
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