研究課題/領域番号 |
16K17931
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
安部 聡 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (40508595)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | タンパク質結晶 / カスケード反応 / 酵素 |
研究実績の概要 |
本研究では、複数種類の酵素をタンパク質結晶に内包し、カスケード反応を促進する固体触媒を創製する。今年度は、加水分解酵素であるリパーゼを多角体内部へ固定化して活性評価を行うために、これまでに多角体への内包が実証されているタグペプチドであるH1ヘリックスを酵素のN末端に結合した融合酵素の作成を試みた。酵素を昆虫細胞(Sf21)内で発現させるためにバキュロウイルスの作成をおこなった。まず、H1を融合したリパーゼDNAのトランスファーベクターを作成した。トランスファーベクターとバキュロゴールドを昆虫細胞にトランスフェクションすることによりバキュロウイルスの作成を試みた。現在、酵素の発現と多角体結晶への取り込みを検討している。 また、基質のアクセスを制御する多角体結晶の分子設計を行った。多角体のペプチド領域を欠損させることにより、結晶内に細孔空間を構築した。具体的には、多角体タンパク質の結晶化に関与していない領域(38残基)を欠損させた変異体を作成した。この変異体のバキュロウイルスを作成し昆虫細胞内で発現させると、細胞内で結晶を形成した。MALDI TOF-MSでは、欠損した分子量を確認した。さらに、SPring-8での結晶構造解析の結果、野生型と同じパッキング構造であることがわかった。また、欠損させた領域以外は野生型と全く同じ構造をしており、欠損領域がなくても多角体は結晶化することがわかった。全体構造では、ユニットセルの中央に多きな空間があり、様々な分子の固定化が可能と考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、リパーゼやアルコールデヒドロゲナーゼといった酵素の多角体結晶への内包を行う必要がある。しかしながら、現在、これらの酵素を細胞内で発現するウイルスの作成に時間がかかっており、酵素内包が思うように進んでいない。一方で、固定化する多角体結晶の変異体作成は順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、酵素を発現するバキュロウイルスの作成を優先的に進める。現在、より簡便にバキュロウイルスを作成可能なBac to Bac手法を使ったウイルス作成を進めており、この方法を利用することにより迅速にウイルス作成を進める。また、カスケード反応を行うために、酵素ー酵素のみならず、酵素ー金属錯体の反応を利用するために、金属錯体の固定化も視野にいれ研究を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、酵素を発現するウイルス作成に時間がかかってしまい、酵素を内包した結晶作成まで行うことができなかったため、消耗品にかかる費用が少なかった。平成29年度では、より消耗品が必要になるため、次年度にまわすことになった。
|
次年度使用額の使用計画 |
繰り越した研究費を有効に活用し、多角体結晶作成のための消耗品に充てる。特に、細胞培養試薬や器具などを大量に購入する。得られた成果を学会で発表するための旅費と論文投稿の論文校正費に使用する。
|