研究課題/領域番号 |
16K17933
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
朴 昭映 京都大学, 理学研究科, 助教 (10628556)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DNA / バイオハイブリッド触媒 / 不斉合成 |
研究実績の概要 |
本研究はDNAのユニークならせん構造に由来する特徴的なキラル空間に着目し、この空間を高度に制御することで、新しい概念のDNA金属酵素を開発し、機能性生体分子としてのDNAを応用した持続可能な合成戦略を確立することを目標とする。本研究により、生命化学と触媒化学、DNAナノテクノロジーという多様な研究分野を融合した学際的な研究領域を開拓し、未来を先導する革新的技術として確立することを目的に掲げる。 申請者はDNAのリン酸骨格にビピリジン配位子(非核酸型リンカー)を導入したDNAハイブリッド触媒を合成し、α,β-不飽和ケトンの水化反応を行った結果83%という高い選択性で生成物を得ることに成功している。さらに、申請者が開発したDNAハイブリッド触媒では右巻きのらせん不斉を保ったまま、既存の自己集合型DNAハイブリッド触媒とは逆のエナンチオマーが得られることも確認している(現在論文作成中)。また、申請者は珪素化合物と第四級アンモニウムカチオンを利用したDNAミネラル化法を応用することによって銅-ビピリジン複合体を含むDNAを固体化し、新しいコンセプトの触媒を開発した。Cu-dmbpy/DNA-シリカミネラルを触媒として用いDiels-Alder反応を行った結果、高いエナンチオ選択性で生成物を得ることを確認し(up to 99% ee)、10回繰り返して使用できることにも成功している(現在論文投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
自然界の加水酵素(hydratase)のように温和な条件下で水の付加反応を行う触媒の開発は非常に難しい挑戦的なテーマであるが、今回申請者は精密に制御したDNAハイブリッド触媒を用いることによりα,β-不飽和ケトンの水化反応で83%という高い選択性で生成物が得られることを見出した。これは、既知の酵素の機能をDNAで代替できる可能性を示唆する結果である。また、DNA-シリカミネラルを用いた反応は、均一系の液相有機合成反応に比べて生成物の単離が容易であり、触媒の回収や再利用に適した方法であることから、グリーンケミストリーの実現への寄与が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
最近、申請者はDNAハイブリッド触媒を用いることにより不斉エポキシ化反応が進行することを見出している。今後はDNAハイブリッド触媒のライブラリーを合成し、不斉エポキシ化反応のエナンチオ選択性を向上するためスクリーニングを行う。DNA-シリカミネラル触媒に関しては、銅(II)イオンの他Zn、Ni、Feなど様々な金属を含むDNA-シリカミネラルを合成し、触媒として有効性を試みる。また、DNAの立体構造から生じる不斉環境については、実験での検討とともに分子モデリング研究とNMR構造解析を並行して行うことで反応機構の解明を目指す。
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