研究課題
標準型[NiFe]ヒドロゲナーゼの光活性化されたNi-SIa状態からNi-SIr状態への戻り反応をFT-IRスペクトルにより追跡したところ、この反応の速度定数(k)はpH 8.5でpH 8.0に比べて約10倍大きくなった。得られたkをもとにln (k/T)を温度の逆数に対してプロットし、アイリングの式よりNi-SIa状態からNi-SIr状態への不活性化反応の活性化エンタルピー(ΔH‡)と活性化エントロピー(ΔS‡)を求めたところ、ΔH‡はpH 8.5(61.6 ± 1.6 kJ mol-1)とpH 8.0(59.4 ± 1.8 kJ mol-1)で有意に変化しなかったのに対し、ΔS‡はpH 8.5(約45 J mol-1 K-1)でpH 8.0(約15 J mol-1 K-1)に比べて約30 J mol-1 K-1大きくなった。以上より、pHの増大に伴うkの増大は、ΔH‡よりもΔS‡の変化に起因することが明らかになった。また、H2OとD2O溶媒中でkを比較したところ、kH/kD = 150(203 K)と非常に大きい速度論的同位体効果が検出された。これらの結果は、Ni-SIa状態からNi-SIr状態への不活性化反応において、Ni-Fe活性部位へのH2O分子の付加と脱プロトン化によりOH-架橋配位子が形成されることを示す。これらの研究成果は、[NiFe]ヒドロゲナーゼの酸塩基平衡を介した活性化・不活性化機構の理解に寄与するものである。EPR分光法によりNAD+還元ヒドロゲナーゼのNi-Fe活性部位構造に関する情報を取得し、X線結晶構造解の結果と組み合わせて、分子内金属クラスターの酸化還元がスイッチとなって酵素活性化の構造変化を誘導していることを明らかにした。
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