研究課題/領域番号 |
16K17939
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
赤澤 陽子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究員 (50549897)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シングルドメイン抗体 / 異分子コンジュゲート / 抗体ー薬物複合体 |
研究実績の概要 |
抗体-薬物複合体(Antibody Drug Conjugate:ADC)の開発における問題点は、抗体分子への薬物コンジュゲートの不均一性による薬効・安全性への影響である。この問題点は通常抗体(IgG)の構造の複雑さに起因するものであり、低分子抗体であるラクダ科動物由来シングルドメイン抗体(VHH抗体)をADCに利用することで、高い均一性と安全性を兼ね備えた次世代ADCが期待される。本研究の目的は、付加される物質(ペイロード)の種類、サイズ、VHH抗体1分子あたりの付加個数によるVHH抗体の機能および物性への影響が明らかとすることで、VHH抗体-薬物複合体開発の技術基盤の確立に資する。 平成28年度は様々なVHH抗体-分子複合体の作製を計画しており、低分子化合物(Biotin、Alexa、FITC)、一本鎖DNA、様々な分子量の二本鎖DNA、RNAの付加体を作製した。異分子付加の為にはペイロードの親水性が重要であり、BiotinやFITC自身は疎水性が高いため、そのまま混合するとVHH抗体が凝集する。疎水性の高い低分子はPGE化された化合物を使用することで、効率のよい複合体作製ができた。一方、異分子付加によるVHH抗体の親和性への影響は、抗体の種類により異なることを認めた。また、分子量の大きいDNAを付加することで、親和性の顕著な低下が認められた。 さらに、VHH抗体の特徴として、熱処理後のリフォールディング効率が高いことがあげられるが、DNA付加により熱変性後のリフォールディング阻害が起き、親和性低下が引き起こされることを認めた。 DNA付加の作製方法について論文を作成中である。また関連する内容で学会および研究会等で3件の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画では2種のVHH抗体のC末端にシステインを挿入したVHH抗体を作製し、マレイミド化したペイロードの付加を計画していた。対象とするペイロードは低分子化合物(Biotin、Alexa、FITC)、核酸(一本鎖DNA、二本鎖DNA、RNA)およびポリエチレングリコール(PEG)である。計画していた複合体の作製は終え、それぞれの複合体について親和性の評価を実施できた。 計画していた目標に対しておおむね順調な成果を出せたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
同じペイロード付加でも、VHH抗体の種類により親和性への影響が異なることを見出した。またDNA付加の場合、親和性およびリフォールディング阻害が起こることを認めた。 今後は、ペイロード付加数の増加と抗体機能への影響について詳細に解析をしたいと考えている。一方で、正確な抗体機能評価のために、VHH抗体ー異分子複合体の精製(未反応のVHH抗体の分離法)が大きな課題点である。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費を計上していたが、該当者が見つからず雇用しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品費として使用する計画である。
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