研究実績の概要 |
本研究の目的はシングルドメイン抗体(VHH抗体)を利用し、抗体-薬物複合体(ADC)の作製に必要な基盤的な技術を確立することである。そのため、公知の抗上皮成長因子受容体(EGFR)-VHH抗体および申請者らが独自に取得したVHH抗体を用いて、様々な付加される物質(ペイロード)の種類・サイズによるVHH抗体の機能や物性への影響の評価を目的としている。 平成28年度では3種の公知 抗EGFR-VHH抗体に低分子化合物(Biotin, Alexa, FITCおよび薬品)や核酸(20bpの1本鎖DNAまたはRNA、100~500 bpの二本鎖DNA)を付加した複合体を作製した。脂溶性の高い低分子化合物はVHH抗体の混合により凝集を起こすが、PEG鎖の付加によるペイロードの親水性向上は凝集を抑制し効率的な複合体化形成を認めた。さらにDNA等の分子サイズの大きいペイロードの付加は顕著な抗原結合の低下を認めた。 これまでの検討に使用した3種のVHH抗体ではペイロード付加による親和性の影響は抗体種により異なっていた。そこで、平成29年度では、VHH抗体種と複合体形成による抗原親和性への影響を検討するため、新たなVHH抗体の取得を実施した。抗原蛋白質を調整し、アルパカへの抗原免疫とスクリーニングを実施した。その結果、11種のVHH抗体配列を得た。これらのVHH抗体を大腸菌で作製し、抗原親和性の評価とペイロード付加体の作製を実施している。一方、VHH-siRNA複合体の作製と培養細胞を用いたターゲット遺伝子の抑制効果を評価した。抗原分子を高発現させた培養細胞を作成とターゲット遺伝子の抑制効果を検討した。その結果、siRNA分子の遺伝子導入と比較すると非常に弱い効果ではあるが、VHH抗体の抗原分子を介した細胞内の取り込みとsiRNAの効果を認めた。
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