研究課題/領域番号 |
16K17941
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
山田 学 秋田大学, 理工学研究科, 助教 (90588477)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 含硫黄ジフェノール / 金属認識 / 溶媒抽出 / 白金族分離精製 / リサイクル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、架橋部に硫黄元素を持つシンプルな二量体構造の含硫黄ジフェノールを母体とした白金族金属に高親和性を有する新奇白金族抽出剤の合成および二次資源である自動車触媒由来の酸浸出液からの白金族金属を選択的に抽出できるシステムの構築である。本年度は下記の成果を得た。 含硫黄ジフェノールにチオアミド基を修飾した抽出剤の抽出実験は、初めに各白金族金属(Pd(II), Pt(IV), Rh(III))の単独溶液から行った。その結果、Pd(II)に対して高い選択性を有することが明らかとなった。次いで、Pd(II)の最適な抽出条件の探索では、抽出時間や塩酸濃度、水素イオンおよび塩化物イオン濃度の変化における抽出率の影響について検討した。抽出メカニズムは、上述の結果と核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトル解析の結果からキレート効果による抽出であると推定し、抽出容量からは化学量論が抽出剤:Pd(II)=1:2であることが明らかになった。自動車触媒由来の酸浸出液(Pd(II)のほか8種の金属種を含有する溶液)からの抽出実験でもPd(II)のみに高い選択性と抽出能力を有し、他の金属種に対しては抽出能力を示さないことがわかった。逆抽出では、チオ尿素-塩酸溶液を用いることが最も有効であるという知見が得られた。抽出剤の再利用性についても検討し、5回繰り返しても抽出能力の低下が見られず、有益な抽出剤であることが明らかになった。 含硫黄ジフェノールにアミド基を修飾したアミド型抽出剤およびアミノ/アミド部位を有するアミノ/アミド型抽出剤は、エステル基を導入した後にアミンを反応させることで効率よく合成することが可能であった。Pd(II)単独溶液からの抽出実験を実施した結果、アミド型抽出剤はPd(II)の抽出能力が低い一方で、アミノ/アミド型抽出剤はPd(II)に高い抽出能力を有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チオアミド基を修飾した抽出剤によるPd(II)単独溶液からの抽出能評価及び二次資源である自動車触媒由来の酸浸出液からのPd(II)の選択的抽出、逆抽出、抽出剤の再利用性に関する検討を行い、自動車触媒由来の酸浸出液からPd(II)を高効率で回収できるシステムの構築が達成できた。また、アミド型抽出剤及びアミノ/アミド型抽出剤の合成が達成できており、2種の抽出剤の白金族抽出能力の傾向を突き止めることができた。以上より、当該年度の研究計画通りに本研究課題は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を踏まえ下記の課題に重点的に取り組む。 アミノ/アミド型抽出剤の白金族金属への最適な抽出条件の検討を行い、実際のリサイクル資源からの白金族金属の選択的な抽出条件の精査を行う。白金族金属を含有する二次資源の自動車触媒由来の酸浸出液を使用し、選択的な抽出の可能性を調査する。酸やアルカリ、チオ尿素溶液を使用した最適な逆抽出条件の検討を図り、抽出剤の再利用性についても同様に評価し、白金族選択的抽出システムを構築する。また、新たなるアミノ基を有する含硫黄ジフェノール抽出剤の開発にも着手し、自動車触媒由来の酸浸出液からの白金族金属を選択的分離の可能性についても調査を進める予定である。
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