研究課題/領域番号 |
16K17942
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梶原 隆史 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特定研究員 (80422799)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有機ヒドリド / 多孔性配位高分子 / NADHモデル |
研究実績の概要 |
低環境負荷な還元系の構築を指向して、補酵素NAD(P)+/NAD(P)Hをモデルにした再生可能な有機ヒドリド供与体の開発が盛んに検討されているが、中間体の不安定性のために高効率なシステムは未だ実現されていない。 本研究では、この中間体の安定化と高反応性の維持とを両立するための反応場として、高度に設計可能な多孔性固体材料である多孔性配位高分子 (以下、PCPと記す) に着目した。 既報のPCPの中から、NAD(P)+/NAD(P)Hモデル部位を導入できるだけの十分な空間を有しており、かつ各種反応条件に耐えるだけの化学的安定性を有しているPCPを選定した。 これらのPCPを構成する有機配位子に注目し、配位子としての架橋構造を変えることなく、NAD(P)+/NAD(P)Hモデル部位を置換基として導入した新規有機配位子を設計・合成した。この新規配位子と母体のPCPとを混合することにより配位子交換反応を進行させ、目的のPCP-NAD(P)+/NAD(P)Hモデル複合材料を得ることに成功した。 各種測定により、この新規複合材料は母体のPCPの骨格構造を保っており、かつ化学反応を行うに足る十分な空間を有する多孔性固体材料であることを明らかにした。 さらに、NAD(P)Hモデル化合物において報告されているC=C二重結合の還元反応が、この新規複合材料を用いても進行することを見出し、PCP骨格中に固定化したNAD(P)Hモデル部位が反応性を有していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
設計した新規有機配位子の合成に成功し、多孔性配位高分子への固定化にも成功した。 さらに、この新規複合材料の反応性についても確認することができ、当初計画の通りに順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
NAD(P)+/NAD(P)Hモデルの置換基効果の検討およびPCP骨格効果の検討を行い、反応性の制御を狙う。 また、電気化学および光化学による再生可能性について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
目的とする有機配位子および多孔性複合材料の合成に当初の想定よりも容易に成功し、合成検討に要する試薬・溶媒などの消耗品費を抑えることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続きNAD(P)+/NAD(P)Hモデル部位を含有する多孔性複合材料の合成を検討するとともに、得られた多孔性複合材料の種々の官能基に対する還元特性を検討するために、様々な反応基質を購入または合成する必要があり、これらの試薬・溶媒などの消耗品費として使用する予定である。
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