本研究では高難度反応が可能となる新しい金触媒の開発を目的とし、金をクラスター化することで、ナノ粒子触媒では見られなかった触媒特性の発現を目指している。担持金クラスター触媒調製の手法として、乾燥過程にマイクロ波照射を用いることで、マイクロ波吸収効率の異なる金属酸化物を担体としても、従来のオーブン乾燥よりも小さな金粒子となることを見出している。平成29年度は、この手法により調製した金クラスター触媒の液相反応への適用を検討した。 香料となるエステルは、工業的に有用な化合物である。エステル合成の従来法であるアルデヒドをカルボン酸に酸化した後、酸触媒によりエステルとする2段階反応に代わり、アルデヒドから1段でエステル化する方法がグリーンケミストリーの観点から注目されている。オクタナールとエタノールからオクタン酸エチルを選択的に得る酸化的エステル化を種々の担持金触媒を用いて検討した。バッチ式の検討において、酸化亜鉛、アルミナ、シリカを担体とした場合に、5時間の反応後、いずれも100%の転化率を示し、目的のエステルが80%以上の選択率で得られた。 次にこれらの金触媒を用いて固定床流通式で反応を行った。転化率は7割程度となったが、選択率は90%以上と向上した。基質溶液の流速を遅くすることで、いずれも転化率は上がったが、酸性担体であるシリカの場合は、触媒接触時間が長くなるとアセタールの副生率が高くなった。一方、酸化亜鉛やアルミナ担体の場合には、選択率94%を維持できた。流通式でも目的のエステルが高い収率で得られ、6 時間の試験中、活性低下は見られなかった。
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