本研究では、汎用高分子に可動型架橋点構造を簡便且つ効率的に組み込むこと手法を確立し、既存高分子に強靱性・伸張性を付与した新素材を創出することを目的とする。 初年度はクラウンエーテル及び二級アンモニウム塩構造を有するロタキサンの各構成成分にニトリル-N-オキシド基を導入したロタキサン型架橋剤を用い、無触媒架橋反応によりスチレン-ブタジエンゴム(SBR)や天然ゴム(NR)を幹ポリマーとする強靱なロタキサン架橋高分子(RCP)を得た。 次年度はビニル基含有ロタキサン架橋剤を用い、マトリックスポリマーとして水素結合形成能を有するアクリルアミド(AAm)を少量添加することで、RCP中の水素結合ネットワークが効率的に作用し、より強靱な架橋体が得られることを明らかにした。また、刺激応答性エラストマー材料への展開を目指し、シクロデキストリン由来のサイズ相補性[3]ロタキサン型架橋剤を新たに設計し、これを用いてビニルポリマー由来の架橋高分子を得た。また、その解架橋挙動について蛍光スペクトルを用いて評価した結果、ほぼ定量的に架橋剤部分の分解が進行することを示した。 最終年度は[2]ロタキサンジオール(Rot-diol)をモノマーに用いてセグメント化ポリウレタン(SPU)を合成し、ロタキサン構造が物理架橋ネットワークポリマー中で与える影響を評価した。適量ののRot-diolを添加することで、破断ひずみが大きくなり、強靱化が達成された。またサイクル試験の結果より、ロタキサン構造を導入することでヒステリシスロスを大幅に抑制できることも確認した。また、このフィルムは破断後もTHFに再溶解することで容易に再生可能であり、分子量や力学物性の明らかな低下も示さなかった。このことより、本ロタキサン含有SPUは強靭性と良好な成形性、リサイクル性を有することが明らかとなった。
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