研究課題/領域番号 |
16K17956
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
桶葭 興資 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (50557577)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自己組織化 / 配向 / 高分子多糖類 / 乾燥 / パターン / 界面 / ソフトマター |
研究実績の概要 |
本研究では、「高分子多糖類水溶液が制限された空間から乾燥させた際、高分子ドメインの自己配向と自己集積を経て高分子膜を複数形成する」ユニークな現象を見出したことをきっかけとする。この現象を解明する第一ステップとして時間因子に焦点をあて、乾燥時の界面配向メカニズムを検証した。 1. 本研究で扱った高分子多糖類サクランは、外径約1um, 長さ20 um以上のマイクロロッド・マクロファイバーを自己集合的に形成することが初めて解明された。このマイクロメートルスケールの自己集合体はセルロースナノファイバーなど他の多糖類と比較しても驚異的に大きな構造単位である。 2. 初期条件として高分子の分子量、濃度について検討した。比較物質として増粘剤としても使用される多糖類キサンタンガムの界面配向現象についても検証した。さらには界面配向・基板吸着現象について、多糖類のみならず、剛直な生体高分子として、骨格タンパク質の微小管とDNAについても検証した。 3. 乾燥した後に架橋構造を導入した多糖類フィルムは、水中で一軸方向に膨潤した。このことから、界面と平行に層状構造を形成していることが示唆された。この水の拡散とゲルの膨潤方向制御について、学術雑誌への掲載時バックカバー(裏表紙)にも選出された。 4. 乾燥プロセスでの界面配向について検証するため、ナノスケールからサブミクロンスケールの微細構造を検証した結果、層状構造が自己相似的に起こっていることが示唆された。この内容について、学術雑誌掲載時、表紙採択された。 5. 上記の実験環境を構築するため、実験装置を自作し観察手法を確立した。この方法論については、ビデオジャーナル誌へ掲載が確定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主な研究業績として、論文発表は、査読付学術雑誌5件、国内雑誌1件で、本研究課題:第一ステップの公表に至ることができた。特に、査読付き論文のレビュワー評価も良く、裏表紙採択1件、表紙採択1件、さらに、ビデオジャーナル1件が含まれる。また、学会発表は、計22件(うち国際会議7件、招待講演3件)と、次の第二ステップのための議論も十分できたことから、次年度の準備状況を含め、おおむね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
一年目の内容を踏まえ、第二ステップの内容を深化させる。初期条件の空間因子を制御することで、乾燥時にはマイクロロッド・ファイバーが配向方向をダイナミックに変化させてマクロな連続構造体を形成する。この配向ダイナミクスについて蒸発速度など時間因子について検討する。まず臨界毛管長に着目し、核形成について固定値X, Y, Zの必要十分条件を明らかにする。高分子膜の乾燥履歴について各種顕微鏡観察で解析することで核形成メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
設備備品費の実験装置において、既製品では機能不十分であったため自作したところ、金額が小さくなったため。 旅費について、予定していた国際シンポジウムが国内で開催され、当初の予定よりも金額が小さくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
海外における国際会議・シンポジウムでの積極的な発表を行う。 投稿論文のオープンアクセス化(有料)を行う、もしくは、オープンアクセスの論文として投稿する。
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