研究実績の概要 |
本研究では蜘蛛糸を構成するたんぱく質をモチーフとして、汎用の合成高分子に種々のポリペプチド鎖を連結させた高分子の化学合成法を確立させ, 蜘蛛糸に見られるような高強度・高伸縮性を実現した新規ネットワークポリマーの創製を目指す。昨年からネットワークポリマーのさらなる強度の向上を目的として、化学架橋点として利用可能な側鎖反応性モノマーの設計・合成に注力している。本年度も継続して反応性モノマーの合成を行いネットワークポリマーの強度・伸縮性のさらなる向上を目指した。L-リジンのアミノ基に過剰量の炭酸ジフェニルを作用させると,Nα-とNε-アミノ基にフェノキシカルボニル構造が導入された化合物を合成することができた。この活性ウレタン誘導体はアミン開始剤共存下における重縮合反応により、Nα-フェノキシカルボニルのみが選択的に重合に消費され、側鎖のNε-フェノキシカルボニル構造が重合後も保持されたポリリジンを合成できることが明らかとなった。得られたポリリジンに対して種々のアミン類(1 級, 2 級, 芳香族アミンが利用可能)を作用させると、側鎖のNε-フェノキシカルボニルでアミノリシス反応が進行しウレア結合を介した側鎖修飾ポリペプチドが得られた。さらに二官能性のアミンを作用させた場合は架橋ポリペプチドを調製することが可能であった。使用するジアミンの種類や量を変化させることにより強度・伸縮性の制御されたネットワークポリマーを調製する事ができた。
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