研究課題/領域番号 |
16K17965
|
研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
平井 慈人 北見工業大学, 工学部, 助教 (80756669)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 酸素発生触媒 / 酸素還元触媒 |
研究実績の概要 |
酸素還元・発生反応に高活性な触媒材料の合成と粒径制御によって、金属空気電池への適用を視野に入れた触媒材料の高性能化を行った。まず、本研究のメインテーマであるMn3+をベースとした酸素発生触媒・酸素還元触媒の合成を行い、その電気化学特性をRRDE(回転リングディスク電極)測定装置によって評価した。具体的には、液相合成と固相合成を組み合わせることによって、Mn2-xCoxO3のナノ粒子を得た。Mn2-xCoxO3合成の狙いは、Mn2O3が元来Mn3O4を凌駕する酸素還元活性を有しているのに対し、(代表的な活性サイトである)Mnに比べて酸素還元活性が低いとされるCoで化学置換したときに活性が減衰するのかを調査するためである。Mn2-xCoxO3の触媒活性を測定した結果、その酸素還元活性は減衰することなく、Coの置換量が増えるにつれて活性が飛躍的に向上した。特に平均電子数は、ほぼ4に収束し、過酸化水素が発生する2電子反応を無視できるレベルまで減少させることができたと言える。Mn3-xCoxO4を用いた以前の研究によって酸素発生反応ではMn3+O6八面体のヤーンテラー歪みの抑制によって、触媒活性が向上することが明らかになっていたが、今回の研究成果により酸素還元反応についても、ヤーンテラー歪みが抑制されると活性が向上することが示唆された。これは、遷移金属イオンのeg 電子数が1付近の時、遷移金属酸化物は酸素還元・発生反応において最大の触媒活性を示すという原則が支配的でないことを意味する。そこで、”Mn3+をベース”という括りをはずして、eg 電子数が0の材料についても触媒探索を行ったところ、Mn3+、Ni3+, Co3+をベースとしたものよりも酸素発生活性の高い物質群が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では遷移金属イオンのeg 電子数が1付近の時、遷移金属酸化物は酸素還元・発生反応において最大の触媒活性を示すという原則をベースに研究を行っていたが、eg 電子数が0の物質群においてMn3+、Ni3+, Co3+をベースとしたものよりも高い酸素発生活性が得られたため、eg 電子数が0の系においても八面体の歪みを抑制するなどの工夫を行うことで触媒活性を更に向上させることができると考えられる。これは、触媒探索の幅を広げるものであり、今後さらなる成果が期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
遷移金属イオンのeg 電子数を0から2まで自由に変化させた上で、化学置換によって八面体の歪みを変化させたり、結晶構造を圧力によって相転移させたりすることで酸素発生活性・酸素還元活性の更なる向上を目指す。そして、触媒活性の比較によって高活性な触媒の支配因子の決定を行う。合成方法には、本年度と同様に、ゾル-ゲル法ならびに高圧合成法を適用する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究の過程で、当初計画していたよりも研究成果が得られたため、触媒活性の出た特定の物質群に関する研究に特化した。そのため、電気化学測定装置は次年度の購入を予定している。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度に電気化学測定装置を購入予定である。
|