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2017 年度 実施状況報告書

金属空気電池に適用できる高性能な触媒材料の合成と触媒活性支配因子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 16K17965
研究機関北見工業大学

研究代表者

平井 慈人  北見工業大学, 工学部, 助教 (80756669)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード酸素発生触媒 / パイロクロア / 電子構造 / 絶縁体 / 金属 / 非フェルミ流体 / 水分解
研究実績の概要

Suntivichらによって、遷移金属のeg電子数が1-1.2付近の時、最大の酸素発生活性を示すと報告されているが、Mn3+を含むLaMnO3などは酸素発生活性が低いなどの反例が多い。そのため、電子数にこだわらず、電子構造の括りで酸素発生触媒の支配因子を見つけなければならない。研究例の多い絶縁体や通常の金属では実現できない特殊な電子構造をもった触媒材料に目を向けるべく、2017年度の研究では、パイロクロア酸化物のHg2Ru2O7が室温において金属的な電子状態と絶縁体的な電子構造を併せ持つ「非フェルミ流体」となることに着目して、その酸素発生活性を評価した。その結果、金属的な電子状態と絶縁体的な電子構造を併せ持つHg2Ru2O7は、既存の酸化物の中で最も過電圧が低く(~150 mV, 10mA/cm2)、電流密度も非常に高い (1.5 V vs. RHE, ~100 mA/cm2)ということが明らかになった。Hg2Ru2O7は、電気伝導率および格子定数がほぼ同じで、Ruが5価のCa2Ru2O7やCd2Ru2O7と比較しても、全ての面で優れた酸素発生活性を示しており、その並外れた活性が特異な電子構造に起因することは明らかである。優れたOER活性は初期活性ばかりでなく、10mA/cm2となる電位での安定性・CVサイクル特性についても、どのペロブスカイト酸化物よりも優れていた。すなわち、過電圧が低いという金属の長所を発揮しつつ、高電位で電流密度が低く安定性も低いというRuO2等が有する短所を克服できた。本成果については、オープンアクセス誌であるAdvanced Science誌の4巻のpp.1700176において公表した。また、Hg2Ru2O7にCa2Ru2O7やCd2Ru2O7を含めた非フェルミ流体が優れた酸素発生触媒となることを特許として出願した(特願2017-14257)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

ここまで、Hg2Ru2O7が既存の酸化物の中で最も過電圧が低く、電流密度も非常に高いということを見出したばかりでなく、オープンアクセス誌であるAdvanced Science誌への論文発表、特許の出願に直結した研究ができたため、当初の計画以上に本研究が進展していると言える。特に、「金属的な電子状態と絶縁体的な電子状態を併せ持つ触媒材料」という指針を明確に打ち出すことができたため、今後の触媒探索が容易になったと言える。今回の知見を得るには、特殊な電子構造をもった触媒である必要があったため、貴金属や重元素が必要であったが、今後の研究では、3d遷移金属なんどの安価な金属を中心に触媒設計を行うことができる。そのため、金属空気電池の正極材料として試すことのできる触媒設計に向けて、大きく前進したという現況である。

今後の研究の推進方策

2017年度の研究から得た知見により、今後の酸素発生触媒の設計には、金属的な電子状態と絶縁体的な電子状態を併せ持つ触媒材料の探索が有効と言える。このような観点から、CoやMnなどを含有する絶縁体の酸化物表面の電子構造を、合成方法の工夫や電気化学的修飾によって金属化するという試みを本年度の研究では行っていく所存である。ここで重要なのは、異なる金属元素を固溶させたり、複合化を行うことなく、絶縁体本来の電子構造を十分に維持した上で、酸素発生反応がスムーズに進行するように金属的な電子構造を最表面に与えることである。このように2種類の電子構造がサポートし合うことで、初期活性だけでなく、長時間における安定性をもった酸素発生触媒の設計が可能となるため、金属空気電池などへの応用に直結させる予定である。

次年度使用額が生じた理由

オープンアクセス誌であるAdvanced Science誌への論文出版、特許の出願に直結した研究ができ、当初の計画以上に研究が進展したため、合成の試行錯誤による費用を最小限に抑えることができたことで、次年度使用額が生じた。2017年度の研究により、「金属的な電子状態と絶縁体的な電子状態を併せ持つ触媒材料」という指針を明確に打ち出すことができたため、CoやMnなどを含有する絶縁体の酸化物表面の電子構造を、合成方法の工夫や電気化学的修飾によって金属化するという試みを2018年度は行うことができる。次年度使用額は電気化学測定・評価に必要なKOH,THF, Naionなどの消耗品の購入に使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 産業財産権 (1件)

  • [国際共同研究] 国立台湾大学 凝縮系物理研究所(台湾)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      国立台湾大学 凝縮系物理研究所
  • [雑誌論文] Non‐Fermi Liquids as Highly Active Oxygen Evolution Reaction Catalysts2017

    • 著者名/発表者名
      Shigeto Hirai, Shunsuke Yagi, Wei‐Tin Chen, Fang‐Cheng Chou,Noriyasu Okazaki, Tomoya Ohno, Hisao Suzuki, Takeshi Matsuda
    • 雑誌名

      Advanced Science

      巻: 4 ページ: 1700176

    • DOI

      10.1002/advs.201700176

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] New finding of electronic structure-activity relationship in oxygen evolution catalysts2017

    • 著者名/発表者名
      Shigeto Hirai
    • 学会等名
      MRS-Korea, and Materials Science Society of Japan, 8月, 東大阪市
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 酸素発生触媒としての強相関電子系2017

    • 著者名/発表者名
      平井慈人
    • 学会等名
      粉体工学会、8月, 奈良市
    • 招待講演
  • [学会発表] 特殊な金属状態の酸化物による酸素発生反応の高効率化2017

    • 著者名/発表者名
      平井 慈人, 八木 俊介, 陳 威廷, 大野 智也, 鈴木 久男, 松田 剛
    • 学会等名
      電気化学会、9月, 長崎市
  • [学会発表] 非フェルミ流体と酸素発生触媒の設計方針2017

    • 著者名/発表者名
      平井 慈人, 八木 俊介, 陳 威廷, 大野 智也, 鈴木 久男, 松田 剛
    • 学会等名
      応用物理学会、9月, 福岡市
  • [産業財産権] 酸素発生反応触媒、酸素発生反応電極及び酸素発生反応方法2017

    • 発明者名
      平井慈人、大野智也、松田剛、八木俊介
    • 権利者名
      国立大学法人北見工業大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2017-14257

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-22  

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