研究実績の概要 |
現在実用化されているLiイオン電池(LIB)の主な抵抗成分は電極/電解質界面に起因することが電気化学インピーダンス解析などから分かっている. 蓄電池材料の内部抵抗を低減するには電極/電解質の異相界面や多結晶内に存在する粒界などの界面におけるイオン伝導現象の振る舞いを電極反応メカニズムから考えていかなければならない. 昨年度の実績としてLIB負極を模したグラファイト電極/不動態被膜(SEI)/ 電解液界面の電荷移動反応の解析を行なった. 電極の電子状態を扱う理論として密度汎関数法に立脚する有効遮蔽媒質(ESM)法と溶液理論の一つであるReference Interaction Site Model (RISM)を組み合わせた(ESM-RISM法). すなわち,電極と反応化学種はESM法による量子力学計算で, 電解液は RISMによる古典分布関数として扱う近似により電極/SEI/電解液界面の電荷移動過程を解析した. 電極・SEI・電解液はグラファイト(LiC6)・炭酸リチウム(LiCO3)・有機溶媒溶液(1 M LiPF6 EC)をそれぞれ組み合わせモデル界面として扱った. Liイオンの挿入・脱離反応としてSEI中をLi空孔またはLi格子間欠陥として移動すると仮定した. Li移動経路に沿って電子の化学ポテンシャルを一定に保つようにESM-RISM計算を行い, Li空孔経路の活性化エネルギーは1 eV以上と求められ, 実験値(0.5-0.6 eV)と比較して大分大きくなった. 一方Li格子間欠陥経路においてはより小さい活性化エネルギーが予想されるが, 収束条件を満たした計算結果は得られなかった.
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