研究課題/領域番号 |
16K17970
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
岩間 悦郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90726423)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リチウム-酸素交換反応 / 可逆反応メカニズム解析 / 高容量 / 長寿命 |
研究実績の概要 |
H28年度は、これまでに可逆化に成功した遷移金属酸化物(MO)の内、二酸化錫(SnO2)および四酸化マンガン(Mn3O4)に着目、各々を中空型構造のナノカーボン(ケッチェンブラック、以下KB)中に複合化した物をモデル材料として、物性評価・電気化学評価を行った。MO/KB重量比率50/50の複合体のHigh resolution透過型顕微鏡(HRTEM)観察より、SnO2の場合は直径2-4nmのナノ粒子が、Mn3O4の場合は直径5~20 nmのナノ粒子が、それぞれ高分散にKB中空構造内に担持されている事を確認された。合成したモデル材料を電極化し、in situ X線吸収微細構造(XAFS)測定を行い、遷移金属イオンの価数評価を確認した。SnO2/KB(50/50)ではSn(4.0+)からSn(4.3-)の間、Mn3O4/KB(50/50)では(Mn2.66+)から(Mn0.1+)の間で可逆に変化している事が分かった。 さらに直径100nmの市販品Mn3O4(バルクMn3O4)を用い、導電補助剤不使用の電極を作製し、同様の評価を行った。in situ XAFS測定よりよりバルクMn3O4のMnの価数は還元反応によりMn(0)までは減少する事、一方で、反応は不可逆である事(逆反応である酸化反応がほぼ発現しない)を確認した。一方、HRTEM 観察より、還元反応の進行につれMn3O4結晶内部に歪みが生じて結晶がナノグレインに分解し、MnとLi2Oへの還元分解が進行する事が分かった。また結晶表面は分厚いSEIに覆われ、Mnナノグレインが絶縁性であるSEIとLi2O内に埋もれており、これがバルクMn3O4の不可逆性の要因である事を突き止めた。 また、別比較材料としてブロンズ型酸化チタン(TiO2(B))およびバナジン酸リチウム(Li3VO4)のナノ複合材料を合成し、電気化学評価も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H28年度には、モデル材料として合成したSnO2/KB(50/50)およびMn3O4/KB(50/50)の結晶・形態・担持状態を評価し、その特異な中空構造担持形態(内包構造)を確認した。さらに基礎的電気化学評価とin situ XAFS測定を組み合わせる事で、コンバージョン反応における反応メカニズム解明に不可欠な遷移金属イオンの価数変化を、電位・容量ごとに切り分け、詳細に追跡する事に成功した。また、不可逆なコンバージョン反応のモデル材料として、導電補助剤を用いない市販品Mn3O4粒子の電極を用い、in situ XAFS解析およびHRTEM観察を行い、コンバージョン反応が不可逆となる要因を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度以降は、得られた解析結果を元に、コンバージョン反応の可逆化に必要な各条件を解明する。具体的には、H28年度に用いたモデル材料であるSnO2/KB、Mn3O4/KBを軸に、形態・分散状態を変化させ、複合化形態観察・電気化学評価を組み合わせる。2つの評価を合わせる事で、1) 本複合体において特異的な内包構造が得られる条件やそのナノ粒子サイズ、担持形態を明らかとし、2) 異なる複合形態活物質を用いた際に得られる充放電応答やサイクル可逆性の違いを紐付けが可能となる。広域X線吸収微細構造(EXAFS)解析を行い、金属-酸素結合距離の変化を電位毎に追跡、さらにX線光電子分光(XPS)測定や電子顕微鏡観察(SEM/TEM)観察により、複合体中のナノ粒子や担持カーボン表面に形成される表面皮膜の解析を組み合わせ、詳細な反応メカニズム解明を目指す。また、反応メカニズム解析で得られた知見を基に、他の金属酸化物複合化合物の探索を行う。
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