研究課題/領域番号 |
16K17977
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村松 眞由 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (20609036)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 固体酸化物燃料電池 / 強弾性 / Phase-field |
研究実績の概要 |
固体酸化物燃料電池(SOFC)の空気極となるランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)の微視組織の発展を考慮し,SOFCにおける強弾性現象を表現可能な数理モデルを開発するために,平成28年度は,フェーズフィールド法を採用して強弾性の数理モデルを構築するとともにプログラムの実装および解析を実施した. LSCFは荷重を与えると特異な相変態が起こり,力学特性が変化することから強弾性体と呼ばれ,SOFCの機械劣化に影響を与えると考えられている.LSCFの結晶構造は通常高温では立方晶,低温では菱面体晶となる.LSCFは約1273Kで焼成させた後,室温までの降温過程において一部の結晶構造が立方晶から菱面体晶へと変化する.このとき,結晶構造が変化したことにより,相変態が起こった領域では固有ひずみが発生し,さらなる相変態が進行する.このように形成された組織はラメラ状であることが知られているが,そのメカニズムは未解明な点も多い.また,強弾性材料の変形挙動を予測するには,解析的に組織を形成させてその組織に対する変形解析を実施すれば,材料組織に依存した力学特性の予測が可能となる.しかしながら,このようなLSCFの微視組織形成を考慮しつつ力学特性を評価する解析はこれまで行われてこなかった. 本研究では,弾性エネルギーを考慮したエネルギー汎関数から支配方程式を導出し,プログラムへ実装した.本プログラムを用いて,まず,強弾性モデルに基づき単結晶の強弾性解析を行った.解析には有限要素解析と文献より得られた物性値を用いた.得られた解析結果と強弾性試験結果とを比較して,ラメラ構造やヘリンボーン構造など観察される構造が数値解析的にも得られることがわかり,数値解析の妥当性を確かめた.さらに,多結晶体母相に適応し,結晶粒によって異なるバリアントおよび方位のラメラ組織が形成される様子を再現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では平成28年度は単結晶のみの解析の予定であったが,多結晶の解析に取り掛かることができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に単結晶解析で性能を確かめた強弾性モデルをさらに多結晶材を用いて検証を進める.結晶粒径や結晶方位に依存して得られる組織の違いを明らかにする.さらに,均質化法を導入し,マクロな力学特性の評価を行う.プログラムにはマクロな力学特性と組織発展とが互いに連成するアルゴリズムを実装するが,計算コストが大きい場合には,組織データを保存し変形解析を行う予定である.得られたプログラムを用いて大規模解析を実施する.また,組織形成後には外部応力を与えることによって強弾性組織を有する材料の力学挙動を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置立ち上げ後,予想より単結晶LSCFの強弾性相の観察が困難で,予定していたLSCFではなくScSZを測定していくことになったため.
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次年度使用額の使用計画 |
当初と同様の計画で実施していくが,当初の予定より性能の良い計算マシン購入に費用を充てる予定である.
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