研究課題/領域番号 |
16K17980
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
亀尾 佳貴 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (60611431)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨細胞 / 骨リモデリング / 骨小腔―骨細管系 / 力学刺激感知 / バイオメカニクス |
研究実績の概要 |
本研究では、骨に対する力学的負荷実験と計算機シミュレーションによる力学解析とを相補的に活用することにより、力学環境に依存した骨細胞の力学刺激感知・情報伝達特性を明らかにすることを目指している。以下に、本年度中の主な研究実施内容と、得られた成果をまとめる。 1.細胞周囲マトリックスを介した骨細胞への流れ刺激解析 骨細胞の力学刺激感知過程において、骨細管内のプロテオグリカンやテザリング要素などの細胞周囲マトリックスが、間質液の流れによる骨細胞の変形を増幅している可能性が示唆されている。そこで、流体―構造連成シミュレーションにより、細胞周囲マトリックスが流れによる骨細胞突起の変形に及ぼす影響を解析した。その結果、加齢や骨疾患に起因して生じるプロテオグリカン密度やテザリング要素の減少は、いずれも細胞突起の引張ひずみを増加させることが示された。 2.マウス長管骨内骨細胞に対する力学的負荷方法の基礎検討 骨組織内に埋め込まれた骨細胞の力学刺激感知特性を明らかにするためには、骨細胞群が形成する3次元的なネットワーク構造を維持しながら、各細胞に対して定量的な力学的負荷を与える手法の構築が不可欠である。そこで、マウスから摘出した長管骨に対し、器官培養を行いながら、in vitro環境下で任意の繰返し4点曲げ負荷を与える実験システムを開発した。また、これと並行し、単離骨細胞の3次元培養実験系の確立を見据え、ゲル上で培養した骨芽細胞様細胞が、自身の細胞内張力を介して能動的に配向する機構について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨細胞の力学刺激感知過程における微視的な力学環境の影響を検討するための基礎的な数理モデルを構築することができた。また、骨細胞ネットワークへの定量的な力学的負荷を可能にする実験システムを開発し、力に対する細胞応答を解析するための準備が整った。よって、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築した骨細胞の力学解析モデルを拡張し、骨組織内で観察される骨小腔―骨細管系の複雑な形態が骨細胞への流れ刺激に及ぼす影響をシミュレーションにより検討する。また、今年度に開発したマウス長管骨への力学的負荷装置とqRT-PCR等の遺伝子発現解析を組み合わせ、力学的負荷が骨リモデリングに関連する遺伝子の発現に及ぼす影響を定量的に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度中にスイスにて3ヶ月間の在外研究を行った際、同国で開催された国際会議にて本研究課題に関する成果発表を行ったため、国際会議出席のために計上していた旅費に相当する繰越金が発生した。 (使用計画) 国際会議または国内学会にて研究成果発表を行う際の旅費として使用する。
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