原子力材料などとしても用いられるバルク状黒鉛材料を適正に利用するためには、その機械的性質や力学的状態を正確に把握することが欠かせない。しかし、同材料においては残留応力などの評価方法が未確立であり、その開発が望まれる。そこで本研究では適当な特性X 線と回折指数の組合せを用いることによる、バルク状の黒鉛材料の応力評価法の確立を目指した。 ところで、黒鉛は結晶方位による機械的特性の異方性が大きいことから、単一方向のでなく六角網平面の面内および面外方向など種々の結晶方向の応力測定が必要であると考えられる。その、面外方位である004 回折の測定では回折角が比較的低角度となるため、側傾法と呼ばれる測定法を用いることで並傾法と比べ高精度な測定が可能となると期待できる。初年度はこの側傾法用ステージの作製および既存装置を用いた並傾法によるX線応力測定を実施した。側傾法ステージは当該年度に完成したが、その制御部に不完全なところがあったため、引き続きその改善に取り組んだ。 また、既存の並傾法装置を用いたX線応力測定においては特性X線を選択的に使用し、六角網面内および面外方向、またその混合方向のX線応力測定を実施した。具体的には供試材に四点曲げジグおよび新たに開発した圧縮負荷試験機によってによって既知の応力を負荷し、その際の供試材表面の応力をX線応力測定法によって測定し、負荷応力とX線応力測定による測定結果の関係について明らかとした。
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