研究課題/領域番号 |
16K17987
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研究機関 | 鹿児島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
徳永 仁夫 鹿児島工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (70435460)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 形状記憶合金 / マルテンサイト変態 / ZrCu / 金属間化合物 / 熱処理 / 組織制御 |
研究実績の概要 |
ジルコニウム(Zr)と銅(Cu)を主原料とし,第3元素としてアルミニウムを添加したZr-Cu-Al合金を作成し,金属間化合物ZrCuが形成される合金組成範囲,特にAlの固溶限のについての調査を行った.また,作製したZr-Cu-Al合金に熱処理を施し,熱処理が材料の微細組織やマルテンサイト変態挙動に及ぼす影響を調べた.母合金はアーク溶解法により作製し,結晶構造をX線回折により調べ,微細組織や成分元素分析にはSEM/EDSを用いた.結果として,ZrとCuがほぼ等原子比でAl濃度が0から10at.%の範囲であるZr-Cu- Al合金については,いずれの合金組成においても目的とする金属間化合物ZrCuが形成されることを確認した.また,鋳込みままの合金においてはAl濃度が10at.%の合金においても,ほぼZrCu単相からなる合金を作製できる.一方で,均質化を目的とした熱処理を施した場合,Al濃度がおおよそ5at.%を超えると,ZrCuのマトリックス中に第2相が析出する,すなわちZrCuに対するAlの固溶限を超えることが確認された.さらに,本研究で作製したAlを固溶するZrCuにおいては,鋳込みまま材および熱処理材いずれにおいても結晶構造がAl濃度によって変化することが分かった. 以上の知見は,Al濃度によってZrCuのマルテンサイト変態挙動と形状回復挙動を制御できる可能性を示唆している.したがって本研究の最終目的である高温駆動型形状記憶合金の開発とその形状回復特性制御技術の確立において重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,ZrとCuに第3元素を加えた材料を作製し,目的とする金属間化合物であるZrCuが作製可能な合金組成範囲を明らかにすることを計画し,実験を行った. まず,アーク溶解炉を新規購入し,研究代表者が材料を作製できる環境を整えた.同時にこれまで得られていた知見をもとに熱処理が作製した合金の微細構造やマルテンサイト変態挙動におよぼす影響を明らかにした.これらの面では研究計画を達成することができた. 一方で,研究代表者が宇部高専から鹿児島高専に異動しことに伴い研究環境の構築に時間を必要としたため,Al以外の添加元素について詳細な検討を行うには至っていない.これらの検討については,次年度以降に十分に達成可能である.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年までの検討で,合金作製および作製した合金の特性評価に関する環境を整えることができた.したがって,平成29年度はAl以外の第3元素を添加したZr-Cu系合金を作製し,調査を行う予定である. ここで,研究を遂行する上での課題として第3元素の選択が挙げられる.第3元素には,ZrやCuと固溶体を形成しやすい元素である,という性質が求められる.当初の計画ではPdなどを使用する予定であったが,これらの元素は高価であり,実装可能性の観点において望ましい元素ではない.したがって,計画を一部変更し,第3元素はZnやNiを使用する. 平成28年度までにX線回折およびSEM/EDSを用いた結晶構造や微細組織,成分元素解析に関する研究環境は構築しているので,新しく作製した材料についてもこれらの検討は引き続き実施する.さらに示差走査熱量分析によるマルテンサイト変態温度の定量分析を行う. 検討する項目は,ZrCuが形成される合金組成範囲の調査(第3元素の種類と量),第3元素を固溶したZrCuのマルテンサイト変態温度の調査,以上2つが主である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が宇部高専から鹿児島高専に異動したことにより,研究設備状況が変わったことが研究計画および助成金の使用額に影響した.特に,申請課題を進める上では材料作製が重要であったが,この面での環境の変化が最も大きく,材料作製ができる環境を整えることを平成28年度の最優先事項とした.そのため,学会発表や論文投稿の準備にかける時間が確保できなかったことが理由として挙げられる.一方で,平成28年度に研究環境を整備したことで平成29年度以降は,予定している研究が十分に実施できると考えている.
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画そのものは概ね申請の通りに進めることができると考えている.使用額として生じた差額は,論文投稿および学会発表に充てる予定である. 論文は,日本機械学会の英文誌(Mechanical Engineering Journal)への投稿を計画している.また,学会発表はM&M2017材料力学カンファレンス(日本機械学会)とThe 15th International Conference on Advanced Materials(IUMRS-ICA)(MRS-J)を計画している.
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