研究課題/領域番号 |
16K17991
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
山田 洋平 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (60756899)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レーザスライシング / Si / SiC / 半導体基板 / 半導体製造 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,微小加工痕の大きさと形状が加工精度・面品位・剥離の再現性に直結するため,形状制御が最も重要となる.そこで本年度は様々な加工条件下における,加工痕形状の分析,形状観察を主として行った.始めに顕微ラマン分光による元素分析を行った.微小加工痕の箇所では,単結晶シリコンと比較してブロードなピークを示した.よって単結晶シリコンが多結晶化していることを示している.また,ピークがシフトしており,微小加工痕周辺に引張応力が作用していることがわかった.よって微小加工痕の生成は多結晶化による体積膨張によるものであるということが明らかになった.次に微小加工痕の断面観察を行った.微小加工痕はレーザ光軸方向と斜め方向に生成される傾向があり,それは出力の大きい条件下において顕著となる.これはシリコンのへき開面である{111},{110}面に一致している.このことから,微小加工痕は,多結晶化による体積膨張によりき裂が生成され,へき開面に沿って成長することが明らかになった. 以上のことから,本手法は結晶方位の影響により加工が阻害される.そこで加工痕を微小化することにより,結晶方位を無視した高精度・高品位加工が可能になると考えた.加工痕微小化のためには材料内部に最低限のレーザ出力で1点に集光し,加工痕を確実に連結させる必要がある.そこで,収差補正管,出力,加工痕間隔の最適化を行った.材料内部にレーザを集光する場合,材料の屈折率の影響で球面収差が生まれる.これによりレーザが広がり1点に集光することが困難になる.これを収差補正管により補正し,レーザが1点に集光される条件を見出し,加工痕が生成される最低限の出力にすることにより,加工痕をほぼ点で生成することが可能になった.これを適切な間隔で生成することにより,従来の1/10以下となる表面粗さRzでうねりのないスライシング加工を達成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はレーザスライシング加工のメカニズム解明を主として研究を行ったが,元素分析,断面観察を通して実験的にはほぼメカニズムが明らかになった.しかし有限要素法による伝熱解析が不十分であり,理論的な裏付けが必要である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,本手法のメカニズム解明のためにシミュレーションによる理論的側面の裏付けと共に,当初の目的である,三次元加工,他材料への適用を行う予定である.三次元加工は,本年度研究成果である,加工痕の微小化により可能になったと考えられるが,これまで二次元的に考えていた加工痕間隔の影響を三次元的に拡張する必要がある.三次元的に加工痕を形成した場合の加工痕同士の連結に着目していく.また,形状によっては剥離が困難となる.そこで新しい剥離技術を構築する必要がある.現状では,熱応力によるき裂の伸展.レーザを面に成形して再度照射して伸展させるなどの方法を試す予定である. 次に,他材料への適用では,これまでSi,サファイアのみに適用していたスライシング加工をガラス,SiCなどの有用な材料に適用する.ガラスは非晶質であり,これまで扱ってきた単結晶材料とは異なるため,スライシング加工が可能であるかを検討する.SiCは他研究者によりスライシング加工可能であると証明されたため,本研究ではその剥離メカニズム解明と高精度化・高能率化を狙って研究を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
納期が遅れ本年度中に申請できなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
断面研磨用エポキシ樹脂を申請いたします.
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