近年3Dプリンタの普及により個人利用での3次元加工や試作が容易に行うことができる.金属材料の積層造形技術について,SLS方式をはじめとする多くの産業用3Dプリンタなどで最終製品をつくる試みがなされている一方で,個人利用が可能な3Dプリンタとしても普及してきた熱溶解積層法(以下FDM方式とする)3Dプリンタで使用できるフィラメントの材料は熱可塑性樹脂に限定され,材料の機械的特性や,造形物の積層方向に対する機械強度が低いこと,加えて造形精度のばらつきが大きいことなどから製品の製造機械として用いられることは少ない.本研究では,あらかじめセラミック粉を含有させたフィラメントを作製し,これを一般的なFDM方式の3Dプリンタに使用しセラミック/樹脂複合体を作製し造形物の機械的性質の向上を試みた.具体的にはフィラメントに含有させるセラミック粉と母材である熱可塑性樹脂の体積比が異なるフィラメントを作製し,これらを用いて得られた造形物の造形精度,耐摩耗性およびデュロメータ硬さについて評価した.セラミック粉を含有させた造形体は造形制度の影響は見られなかったものの,非加圧成形体であることから耐摩耗性の向上は確認されなかった.また,樹脂のみの造形物に比べて熱伝導率と熱容量の増加から耐熱性については低下することが確認された.一方でセラミック粉を50vol.%以上含有した造形物を熱的に脱脂後に焼成することで,セラミック体の造形が可能であることを確認し,3Dプリンタによる造形時の充填密度を任意に制御することで傾斜機能を有するセラミック焼結体が作製可能であることを確認した.
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